1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11164264
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中川 純男 慶応義塾大学, 文学部, 教授 (60116168)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 通男 慶応義塾大学, 言語文化研究所, 教授 (00012500)
西村 太良 慶応義塾大学, 文学部, 教授 (90164590)
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Keywords | アリストテレス / スンマ(大全) / ラテン西欧 |
Research Abstract |
イスラム文化圏を経由してラテン西欧に流入したアリストテレスの著作は、その広範な問題領域により、新たな領域の知識へと好奇心を呼び覚ましただけでなく、学問の方法も大きく変えることになった。アリストテレス解釈は、形成期にあった大学での講義の方法や著述の形式に変化をもたらした。「問い(quaestio)」と呼ばれる講義および著述の形式は、ある問題について相容れない二つの立場を提出した後、その問題の適切な解決を探るという方法であるが、これはアリストテレスのテキストを読みすすむにあたり、複数の異なった解釈のいずれを選ぶべきか決定しなけらばならないという実際的な必要が生み出したものである。また、もともとは「要約」を意味した「スンマ(summa)」が、「大全」と訳されるような、ある分野の知識の包括的体系的叙述を意味するようになったのも、アリストテレスの影響であると考えられる。なぜなら、アリストテレスの学問的方法は、先行研究の批判的検討から学問領域の確定と、そこで取り扱われるべき問題の提示を行おうとするものだからである。しかし、アリストテレスの影響は、たんにその著作内容によるだけではない。論理学、自然学、形而上学(神学)、倫理学といった学問領域の区分はアリストテレス自身の区分というよりむしろ、ヘレニズム時代の末期に編集されたアリストテレス全集の著作分類によるところが大きい。この意味で、西洋におけるアリストテレスの伝承は、テキストの伝承であると共にテキスト解釈の伝承でもある。
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[Publications] 中川 純男: "イデアと存在-『パイドン』の想起説"古代哲学研究. 31号. 1-14 (1999)
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[Publications] 中川 純男: "古代・中世の倫理思想-原理的考察"有福孝岳編『エチカとは何か-現代倫理学入門』. 4-23 (1999)
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[Publications] 中川 純男: "アリストテレスと西欧中世"古典学の再構築. 5号. 50-51 (1999)
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[Publications] 西村 太良: "αWTOS Revisited - Some Aspects of Pinder's Vocaburaries"古典古代における語彙と語法. 47-77 (2000)
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[Publications] 高橋 通男: "ヘレニズムの詩におけるアリュージョンとホメーロス研究3"慶応義塾大学言語文化研究所紀要. 31号. 55-74 (1999)
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[Publications] 高橋 通男: "叙事詩における言語表現の継承と模倣"古典古代における語彙と語法. 5-45 (2000)