2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11164266
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
佐藤 研 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (00187238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青野 太潮 西南学院大学, 神学部, 教授 (40122634)
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Keywords | イエス / 原始キリスト教 / 伝承 / 共観福音書 / トマス福音書 / 共観表 / 様式史 / 聖書学 |
Research Abstract |
(1)ツールの作成(1):研究代表者は1999-2000(平成11-12)年度計画研究において、標準的ギリシャ語共観書中の福音書テクストを比較検討し、その共通語を色染めし、コンピューターに入力した。今年度は、その色染め作業の微細な修正に多大な時間が必要であった。その結果、それ相当に精密なツールが出来上がりつつある。更にはナグ・ハマディ文書中の「トマス福音書」の並行記事をもギリシャ語版で打ち込み、それに該当する共観福音書の並行箇所に脚注の形で入れた。さらには現在、ヨハネ福音書の一定程度の並行記事も、テキストボックスの様式で挿入する作業をしている。それらの部分も色彩的に明示し、全体をヴィジュアルに編集しぬく作業が続いている。 (2)ツールの作成(2):新訳の福音書、更には邦訳の「トマス福音書」を基に、上記(1)のギリシャ語共観表に正確に対応する形で日本語共観表を作成すべく、訳語の微細な調整を行ってきた。 (3)「古典の古典訳」計画:新たに浮上した新計画として、『改訂版・文語訳聖書』を本科研費プロジェクトとの関連で世に送るそれがある。そのための試行作業として、ヨハネ福音書の改訂文語訳(脚注つき)を作り、各方面の批判に供した。おおむね好評で、このような「古典」の復興作業にも意義のあることを新たに発見した。この作業は、これからも継続し、四福音書の改訂文語訳をも完成すべく努力したい。 (4)伝承変遷史研究:これまでの新約学におけるイエス伝承研究の全体を総括し、視野を拡大深化させる目的をもって研究を続行した。その際、まず、イエス伝承が使徒パウロの中でいかに受容され、変容されたかの実態も改めて留意し、研究分担者との共同研究を開始した。これまでの中で判明したことは、一般に考えられてきた映像とは逆に、パウロはイエス伝承の文面と何よりもその背後にあるイエスの生き方に自らを深く規定させている実態である。また、さらに明らかになったことは、イエス伝承の1-2世紀間の軌跡の中に現れる、その可塑性と新たな自己再生力の大きさである。そこでは「イエス」は、伝承者(たち)の自己アイデンティティ創出と社会的自己投機行為のための核および「場」そのものとなっている。
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[Publications] SATO Migaku: "Ist Matthaus wirklich Judenchrist?"Annual of the Japanese Biblical Institute. 27(予定). (2002)
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[Publications] 佐藤 研: "ガリラヤで解けた二つの『なぜ』--なぜ『カイサリア・フィリピ』か、そして、なぜ新都ティベリアスが造られたのか--"日本の聖書学. 7. 60-75 (2001)
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[Publications] 佐藤 研: "悲劇と福音--原始キリスト教における悲劇的なるもの--"清水書院. (2001)
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[Publications] 島薗進, 高橋義人, 佐藤研 他: "グノーシス 異端と近代"岩波書店. 371 (2001)