2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11164269
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
土田 健次郎 早稲田大学, 文学部, 教授 (00120923)
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Keywords | 朱子語類 / 朱熹 / 語録 / 朱子語類大全 / 血脈 / 意味 / 左験 |
Research Abstract |
文語で書かれた文献とともに宋学の古典として定着していったのが口語文献であり、その代表が『朱子語類』である。今年度は前年度から行っている『朱子語類』の性格についての多角的検討を継続するとともに、特に口語の語録を必要とした朱熹が置かれていた当時の環境と朱熹自身の思想的要請について資料を収集した。それには朱熹周辺の士大夫の文集や語類を精査せねばならず、その中から拾える資料の蓄積を行った。また朱子学系統の注釈類には朱熹の経注の理解を助けるために語録が多量に引用されているが、朱子学の末疏の類における語録引用の実態についても調査を行った。 本年はまた朱熹の経書解釈の方法論の解析に力を入れた。この方法論は口語語録と並んで朱子学の古典学を特色づけるものである。まず朱熹が使用する「語脈」、「意脈」、「文脈」、「文勢」、「血脈」、「文理」、「語義」、「字義」、「意義」、「意味」、「意思」、「左験」、「事証」の用例を朱熹の文献から収集した。その際に『朱子語類』のように台湾の中央研究院のデータベースがあるものなどはそれを利用したが、その他の『朱子文集』、『四書集注』、『四書或問』、『詩集伝』、『周易本義』、『楚辞集注』をはじめとする諸文献については統一方針を作り作業補助者とともに収集作業を行った。それらの用例は現在逐次データ化を進めている。これらの語は朱熹が経書を解釈する時に使用する常套語であるが、「血脈」、「意味」、「左験」の三つの系統に整理できる。この方法論が実際の経書解釈の場でどのように適用されているかの検証をあわせて推進した。 朱熹の経書解釈の方法論は伊藤仁斎をはじめ後世に影響をあたえるとともに、古典解釈のもつ客観性と主観性の調和という古典学の本質的問題に対して今なお多くの示唆をあたえるものである。
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Research Products
(1 results)