1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11164270
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
安藤 充 愛知学院大学, 文学部, 助教授 (90183152)
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Keywords | パルワ / マハーバーラタ / 古ジャワ語 / モーサラパルワ / プラスターニカパルワ |
Research Abstract |
古典インド叙事詩『マハーバーラタ』の伝承が古ジァワ散文文学(パルワ)に受容されていくプロセスを文献学的に解明することを目的とする本研究の初年度は、『マハーバーラタ』最終4巻の読解とサンスクリット原典の対照を中心に進めた。 古ジャワ・パルワについては、近年刊行されたテキスト・英訳が恣意的な校訂・補訳の多いことが明らかになった。オランダ・ライデン大学に赴いて写真資料調査をおこない、主な現存写本について情報が得られるようになったので、一部テキストから、写本にさかのぼって読解を進めている。次年度にもこの作業を継続し、いくつかのパルワテキストを電子化して公開できるようにしたいと考えている。 従来の研究では、パルワに直接引用されたサンスクリット韻文のみを比較して、サンスクリット原典からの受容が論じられていたが、パルワ全体を読解し、そのうえでサンスクリット版と比較することにより、伝承をいかに受容しているか、という点で、いくつかの新たな知見が得られた。詳しくは次年度中に論文にまとめる予定であるが、要点を2点挙げれば、 1.『モーサラ』には引用サンスクリット文および一部エピソードの中に、サンスクリットの北方伝承ないしはそれに近似する南方伝承版との親密な関係を思わせる断片が見出される。 2.『プラスターニカ』の方は、ストーリー展開としては『モーサラ』よりもさらに原典に忠実である。 固有名詞通称の単純化、あるいは一部エピソードをサンスクリット語風の用語で表現するなど、原典の内容を正確にふまえたうえでの翻案を思わせる。この点、『モーサラ』同様、パルワへの翻案の成立がそれほど後代ではないことを示していると推測される。ただし、プラスターニカの一部の伝承には、言語的、内容的にかなり後からの挿入と見られるエピソードが混入しており、その出自についは、今後の検討が必要とされる。
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