2000 Fiscal Year Annual Research Report
チベット蔵外文献学説綱要書の視座より見たインド古典諸論書の思想の文献学的研究
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11164273
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
森山 清徹 佛教大学, 文学部, 教授 (70131307)
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Keywords | チベット仏教 / 学説綱要書 / 二諦説 / チャパチョキセンゲ / ツォンカパ / ゲールク派 / カマラシーラ / 解深密経 |
Research Abstract |
チベット仏教学説綱要書(Grub mtha')の翻訳と分析を通じ,インド大乗仏教に一貫する思想を,二諦(二真理)すなわち世俗諦と勝義諦の関係を探究する視点から解明を行った。そこから得られた知見は<二諦は自性が同一であり,排除する対象が区別される関係にある>と規定されるものである。こう二諦相互の関係を定義することは,ツォンカパ(1357-1419),ケードップジェ(1385-1438),ジャンヤンシェパ(1648-1721),ガワンパルデン(1797-?)に至るゲルク派の伝統となっている。この見解は,ツォンカパよりもさらに250年程逆上ったカダン派のチャパチョキセンゲ(1109-1169)の『東方自立中観三論書の千の投与』の中に,その起源のあることが明らかとなった。さらにそれはチャパがインド自立中観派のカマラシーラ(c.740-797)の『中観光明論』により創造し,このチャパの創造が,ゲルク派に継承されたものである。チャパがその二諦の関係の定義を導く上で,いかにカマラシーラに負うているかは,次の二点に集約し得る。(1)論理による検証では,ダルマキールティの刹那滅論,アポーハ論を基盤に据え離一多性因による無自性論証において,その立証因を絶対否定の場合,相対否定の場合に区分し検証すること,(2)聖教としては『解深密経』を典拠として二諦が,同一である場合,別である場合の矛盾を指摘し,<二諦は同一でも別でもない>と導くこと。この(2)の『解深密経』解釈を巡っては,先の定義との関係から,カマラシーラとチャパとでは見解が異なる。カマラシーラは,自性としての同一性と別異性が否定されている,すなわち無自性が説かれていると解釈するに対し,チャパは『解深密経』は,自性が異なる場合と排除する対象が同一である場合の帰謬(プラサンガ)を説いていると見る。この点ゲルク派はチャパの見解に等しい。以上の通り二諦説を巡るインド仏教カマラシーラからチベット仏教への変遷を見い出し得る。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 森山清徹: "カマラシーラの自立論証としての無自性論証とダルマキールティの推理論-madhyamakalolea和訳研究-"戸崎宏正博士古稀記念論文集『インドの文化と論理』. 475-485 (2000)
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[Publications] 森山清徹: "カマラシーラの『中観光明論』とゲルク派の二諦説の解釈-アポーハ論と『解深密経』に基づく勝義諦と世浴諦の区分-"石上先生古稀記念論文集. 63-86 (2001)
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[Publications] 森山清徹: "世親,ダルマキールティの滅無因説と中観派-自立論証派と帰謬論証派の見解の相違-"印度学佛教学研究. 48巻1号. 187-195 (1999)
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[Publications] Seitetsu Moniyama: "The dGe lugs pa Theory of the two truths and Kamalasila"Ninth Seminar of The International Association for Tibetan Studies, Book of Abstracts. 105-105 (2000)
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[Publications] 森山清徹: "チベット仏教,チャパチョキセンゲ及びゲルク派(dGe lugs pa)の二諦説の解釈"「古典学の再構築」第I期研究成果報告. 78-85 (2001)
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[Publications] 森山清徹: "チベット仏教,ゲールク派(dGe lugs pa)の二諦説の解釈"古典学の再構築. 第8号. 102-105 (2000)