2000 Fiscal Year Annual Research Report
原始仏教思想の解明-バラモン教聖典の同時的解明を通じて-
Project/Area Number |
11164277
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
中谷 英明 神戸学院大学, 人文学部, 教授 (20140395)
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Keywords | kratu / manas / スッタニパータ / 原始仏典 / 韻律分析 / 意欲・思い / 古代インド思想 / アショーカ王 |
Research Abstract |
本研究の目的:文献学的手法により、現存する資料から知られるかぎりの最古の仏教思想の解明につとめる。 本年度の研究実績: (1)研究代表者自身が過去に文部省科学研究費によって構築したパーリ仏典、アショーカ王碑文の他、インターネット上で公開されている『リグヴェーダ』、『アタルヴアヴェーダ』、『シャタパタ・ブラーフマナ』、『ブリハッドアーラニヤカ・ウパニシャッド』、『チャーンドーギヤ・ウパニシャッド』、『マハーバーラタ』などのテキスト・データベースを用い、最初期仏典の思想をバラモン教思想の発展中に位置付けるための研究を行った。 (2)仏典として現存最古の伝承を伝えるとされる『スッタニパータ』に関して,4層が区別されること,I層はアショーカ王以前の孤独な遊行生活,II層はアショーカ王当時の僧団生活,III・IV層は「ニカーヤ」編纂当時の大教団生活を反映すること,II層以降では思想の体系化が順次進行することは、既に昨年度に指摘した。 (3)本年は,kratuとmanasという2語についてともに人間の「意欲」,「思い」という意味で一貫して理解可能であり,意欲への着目は『リグヴェーダ』から原始仏典に至るインド思想の太い脈を成していることを指摘した。 (4)平成13年2月28日から3月9日まで米国に出張し、Harvard大学のDepartment of Sanskrit & Indian StudiesにおいてAn analysis of the Suttanipata:Recovering the most ancient portions of the Buddhist Canon.'と題する講演を行い、Michael Witzel教授,Patrick Olivelle教授などと意見交換を行った。『スッタニパータ』に関する分析は未知の知見をもたらすものとして驚きをもって迎えられ、大変有望な分析方法であること、今後若手の研究者をその方面に振り向けたいとのコメントを得た。
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