1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11164279
|
Research Institution | Junshin Junior College |
Principal Investigator |
南里 一郎 純真女子短期大学, その他部局等, 講師 (10312191)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹田 正幸 九州大学, 大学院・システム情報科学研究科, 助教授 (50216909)
|
Keywords | 和歌 / 表現技法 / 機械発見 / 類似歌の自動抽出 / 共通文字列 / 類似性指標 / 生起頻度 / 常套表現の排除 |
Research Abstract |
本研究は、古典和歌における表現技法の系譜を明らかにすることを目指している。『新編国歌大観』に収められた和歌は、45万首にものぼるため、人手だけに頼っていたのでは限界がある。そこで、この大量の和歌データを計算機上に実現したプログラムによって処理し、そこで得られた結果を人手で評価するというスタイルで研究を進める。 和歌の表現技法の影響関係は、表現の類似性に表れる。そこで、計算機処理の際には、一首の和歌を単なる仮名文字列と見なし、共通する部分列を多く含むという観点から類似性を捉えた。そして、和歌間の類似性指標を独自に定め、歌集間において類似度の高い歌の対を自動抽出するという手法をとった。これによって、今まで見過ごされてきた表現の影響関係をいくつか見出すことができた。たとえば、親心の率直な吐露とのみ評価されてきた藤原兼輔の歌(後撰集1102番)が、清原深養父の歌(古今集585番)の骨組みを利用した、いわば「替え歌」であることを発見した。これにより、古歌を踏まえた歌作りの一面が明らかになった。また『為忠集』の成立年代について、これまで鎌倉中期頃かといわれてきたが、表現の授受関係から、実は室町期であることを実証した。表現研究が歌集の成立年代推定にまで発展した例である。 次に、さまざまな類似性に対応するため、使用する類似性指標の変更を試みた。その結果、ある特定の詠歌状況下で用いられる表現や、伝来の過程で本文異同が生じた異伝歌、掛詞などの表現技巧が共通する歌などが抽出された。とくに、共通文字列の生起頻度を考慮した指標を用いた場合は、以前の指標では類似度が下位になっていた歌の対を拾うことができ、既知の常套表現を排除した、より緊密な類似性を持つ歌の対が得られた。
|
-
[Publications] Kouichi Tamari: "Discovering Poetic Allusion in Anthologies of Classical Japanese Poems"Proc. Second International Conference, DS'99. 128-138 (1999)
-
[Publications] 玉利公一: "和歌データからの類似歌発見のための類似性指標について"情報処理学会研究報告. Vol.2000 No.8. 88 (81)