1999 Fiscal Year Annual Research Report
熱処理によるナノチューブの合成とボロンネットワーク固体の開発
Project/Area Number |
11165209
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 薫 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (30169924)
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Keywords | BNナノチューブ / Li蒸気下での熱処理 / アモルファス・ボロン / β菱面体晶ボロン / アームチェア型 / BNコーン / 金属結合-共有結合転換 / 金属-非金属転移 |
Research Abstract |
本年度は、我々が発見し他のグループのBNナノチューブ作製法と本質的に異なるLi蒸気下での熱処理(1200℃、約10時間)を用いて、アモルファス・ボロンとBNの混合粉末を出発原料としたBNナノチューブ生成条件を探索した。原料粉末のアモルファス・ボロンとBNを混合しないで、隔てた状態でステンレス容器内に置いた場合、BNレイヤーが絡まった組織やBNナノチューブが、アモルファス・ボロン側に生成した。さらに、BNの代わりにAINを用いても同様の結果となった。これらのことから、BNレイヤーが絡まった組織やBNナノチューブは、Li蒸気下でアモルファス・ボロンが窒化することにより生成すると考えられる。この方法を用いることにより、BNの生成物を原料BNから分離して収集することも可能となった。 出発原料としてアモルファス・ボロンの代わりにβ菱面体晶ボロンを用いた場合に、2つの新奇構造を発見した。一つは、h-BN粒子の[1010]方向にアームチェア型のBNチューブが密集して覆っているものである。この結果は、アームチェア型のBNチューブがその先端にB原子とN原子が交互に配置しているため極めて安定に成長するというモデルと一致している。二つ目は、h-BNシートに300°の回位を導入してできる円錐(BNコーン)を入れ子状に重ねたものである。 アモルファスSiにVを添加した場合、局所構造が約15at.%Vで4面体配位のネットワークから金属間化合物的なものに変化した後で金属一非金属転移が生じるという報告がある。一方、アモルファスB(a-B)の場合は、B-3.5at%V以下で金属への転移が起こるが、この組成では構造変化は起きておらず正20面体クラスター(B_<12>)を基本構造としたa-B的な局所構造を保ったまま金属一非金属転移が生じていることが明らかになった。これは、β菱面体晶ボロン(β一B)のA_1サイト的なa-B中のサイトをVが占めることにより、周囲の4つのB_<12>の結合が共有結合から金属結合に転換したためと考えられる。β-BのA_1サイトを占有しないZrの場合は、その電気伝導率は同じ組成のB-V系試料に比べて大きな温度係数を示した。Zrはa-B中でVとは異なるサイトを占有し、B_<12>の金属結合一共有結合転換を引き起こさないと考えられる。
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[Publications] H. Yamaguchi, K. Kimura., et al.: "Structure and Optical Properties of Boron-Silicon Amorphous Films"Transactions of the Materials Society of Japan. 24-1. 85-88 (1999)
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[Publications] K. Kimura: "Structure, Bonding and Properties of Icosahedral Cluster Solids Evaluation of Thin Films and Powders using Synchrotron Radiation"Proceedings of the Japan-China Bilateral Symposium on Advanced Materials Engineering. 26-31 (1999)
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[Publications] M. Fujimori, K. Kimura, et al.: "Peculiar Covalent Bonds in α-Rhombohedral Boron"Physical Review Letters. 82-22. 4452-4455 (1999)
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[Publications] 藤森正成、木村薫 他: "正20面体クラスター固体α菱面体晶ボロンの奇妙な結合"固体物理. 35・4. 277-282 (2000)