1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11166215
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平尾 公彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (70093169)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 隆人 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (10312993)
中野 晴之 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (90251363)
|
Keywords | 分子物理化学 / 電子相関問題 / 電子状態理論 / 多配置摂動法 / MRMP法 / 相対論効果 / RESC法 / QCASSCF法 |
Research Abstract |
本研究の目的は新しい分子理論の開発やアルゴリズム、ソフトウエアの開発をもとに「次世代の分子理論」を開拓し、「理論に先導された分子設計、反応制御」を達成することにある。特に数百から千原子系を定量的に扱える分子理論の開発を目標にしている。本年度は以下に述べるように、(1)新しい分子理論の開発、ソフトウエアの開発、(2)相対論的分子理論の開発、(3)大規模分子計算に向けた密度汎関数理論の開発および応用研究として(4)分子理論の触媒反応系への適用、の4つのテーマに重点をおいてプロジェクトを推進してきた。 大規模分子にも適用できるabinitio分子軌道理論として、多配置摂動論(MRMP,MC-QDPT)などの開発を行い、分子の励起スペクトル、化学反応等に適用してきた。多配置摂動論は少ない計算コストで精度よく分子の電子状態を記述することができる方法として現在では確立した手法となっている。しかしメゾスコピック系を実際に取り扱うには、i)基底関数による物理量演算子の表現である多量の分子積分の高速計算、ii)メゾスコピック系の多数ある分子軌道の効率よい決定、iii)孤立分子だけでなく、溶液中の電子状態、反応の理論的記述に必要な溶媒効果の取り込み、表面における分子の電子状態、反応の記述を可能にするバルクの効果の取り込み、など数多くの解決すべき問題が残されている。これらの問題を新たな電子状態の手法、アルゴリズム、およびプログラムを開発することによって、一つ一つ解決していくことをめざしている。最終的にはこれらの手法を系統的に適用し、メゾスコピック系の電子状態計算を最初から最後まで、一貫して行うことができるようなプログラム・ソフトウェアを開発することを視野に置いている。すでに高速積分プログラムパッケージSPHERICAの開発に成功している。 重い原子を含む系を研究する際には相対論的効果が重要になってくる。理論的に相対論的効果を考慮するにはSchr dinger方程式のかわりに、Dirac方程式が解かねばならない。Dirac方程式は4成分spinorを持つため計算コストが高く、現在のところ分子への適用は小さな系に限られている。われわれはDirac方程式の持つsma11成分を理論的に消去することにより、RESC法と呼ぶ新しい相対論的電子状態理論を開発した。RESC法は変分的に安定で、高次の相対論的効果を取り込むことができる。また、容易に既存の非相対論的電子状態プログラムに組み込むことができ、どんな電子状態理論に対しても相対論的効果を考慮することが可能である。この方法で相対論的効果を考慮するためにかかる時間は、対応する非相対論的計算とほとんどかわらない。RESC法を高度な電子相関理論と組み合わせることによって、基底状態に限らず、重い原子を含む系の励起状態の計算に対しても適用可能である. われわれは分子理論を応用する化学系として触媒反応系、溶液内反応に着目している。工業的に重要な化学プロセスに利用される触媒の多くは、従来は試行錯誤的な物質探索を経て開発されてきたが、原子・分子レベルでの反応機構と触媒効果が分かれば、より合理的な触媒開発が可能なはずである。また多くの化学反応は溶液内で進行する。DNA,RNAなどの生体分子が関与する系はなかでもとりわけ重要である。本応用研究では、分子理論計算の手法を用いて触媒反応、溶液内反応のメカニズムを明らかにし、触媒設計、反応設計の指針を提案することを一つの目的としている。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] T. Nakahima: "A new relativistic theory: A relativistic scheme by the elimination of small components (RESC)"Chem. Phys. Lett.. 302. 383-391 (1999)
-
[Publications] K. Nakayama: "Different Bases for Different Correlation Effects: Multireference Moller-Perturbation Theory in the Extended Basis Function Space"Chem. Phys. Lett.. 300. 303-311 (1999)
-
[Publications] Y.K. Choe: "Theoretical study of the electronic ground state of Iron (II) Porphine. II"J. Chem. Phys.. 111. 3837-3845 (1999)
-
[Publications] T. Taketsugu: "Multidimensional tunneling dynamics on HSiOH cis-trans isomerization of interpolated potential surface"J. Chem. Phys.. 111. 3410-3419 (1999)
-
[Publications] T. Tsuneda: "A re-examination of exchange energy functionals"J. Chem. Phys.. 111. 5656-5667 (1999)
-
[Publications] T. Nakajima: "A new relativistic scheme in Dirac-Kohm-Sham theory"Chem. Phys. Lett.. 305. 271-277 (1999)