1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11166227
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
笹井 理生 名古屋大学, 大学院・人間情報学研究科, 教授 (30178628)
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Keywords | エネルギーランドスケープ / ガラス転移 / 水素結合ネットワーク / 進化シミュレーション / 蛋白質フォールディング |
Research Abstract |
水分子のつくる水素結合網の運動が詳細に調べられた。その結果、個々の水分子は局所的に構造化された水素結合を保つ構造化状態と、局所的に構造を失った非構造化状態の2状態をとり、構造化状態と非構造化状態との間の入れ替わりは明瞭なスイッチング現象として記述されることが明らかにされた。この成果から、水溶液中の溶質分子の周辺の水分子についても静的、平均的な記述ではなく、構造化クラスターと非構造化クラスターの生成崩壊の観点から動的な記述が必要であることが予想される。 また、蛋白質フォールディングがスピングラス理論、格子模型、経験的ポテンシャルを用いた分子動力学計算などの方法を総合して分析された。その結果、エネルギーランドスケープの統計的特性量など、蛋白質の動的性質を記述する新しい物理量の有効性が示された。この成果を酵素反応などに応用し、蛋白質の機能をランドスケープ理論の立場から見直すことが重要となってきている。とくに、分子モータにおけるATP分解と力学運動のカップリングの機構など基本的な問題に挑戦することができる可能性が明らかになってきた。 さらに、機能に基づいて配列を選択すると、蛋白質全体の構造やフォールディング能力がいかに変化するか、という問題が、経験的ポテンシャルを用いた分子動力学計算などを用いて調べられた。とくに、「数残基の活性部位の立体配置が適切になるように」という局所的条件だけで配列を選択しても、ヘリックスの形成、コンパクト化、フォールディング能力の向上など蛋白質全体の性質の著しい変化が観察され、活性と全体の蛋白質らしさがいかに相関を持つかが明らかになりつつある。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] T. Yomo, S. Saito and M. Sasai: "Grandual Development of Protein-like Global Structures through Functional Selection"Nature Structural Biology. 6. 743-746 (1999)
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[Publications] S. Saito and M. Sasai: "Kinetic Consistency in Protein Folding Process"J. Mol. Structure (Theochem). 462. 503-521 (1999)
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[Publications] H. K. Nakamura and M. Sasai: "Old and New Views of Protein Folding"Elsevier. 125-131 (1999)