1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11166262
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
長村 吉洋 立教大学, 理学部, 教授 (50160841)
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Keywords | ベンザイン / 2+2環化付加反応 / 位置選択性 / 分子軌道法 / 化学反応機構 / 密度汎関数法 / ONIOM法 / 双性イオン中間体 |
Research Abstract |
ベンザインは反応性に富んだ科学種であり、様々なタイプの環化付加反応を引き起こす。本研究では、ベンザインとオレフィンとの[2+2]環化不可反応のポテンシャルエネルギー面について非経験的分子軌道法を用いて理論計算により調べた。この反応は軌道対称性より禁制であることから、双性イオン中間体を経る二段階反応で進行することが示唆されている。本理論計算から、反応の初期段階ではオレフィンがベンザインの環平面に対して垂直に近づき、第1の遷移状態を経て、スビロ型中間体を形成した後、第2の遷移状態を経て2つのC-C結合生成を伴う環化付加が進行すること明かとなり、反応途中の2つのエネルギー障壁の大小が反応機構に大きく関わっていることを明らかにした。 無置換のベンザインとエチレンとの反応では、B3LYP/6-311G^<**>法を用いた計算では、反応障壁は13kcal/molと計算された。ヒドロキシ基をベンザインとオレフィンの両方に導入した場合には、エネルギー障壁は低くなり、中間体から異なった生成物に至る2つの反応経路が存在する。この2つの経路のエネルギー障壁には明らかな差があり、反応の位置選択性を生じさせる原因となっていることを明らかとなった。 さらに、大きな置換基を導入した場合についての検討を始めるために、反応中心は高い精度の計算方法を用い、反応に直接関係しない部分は比較的低い精度での計算方法を用いるONIOM法の適用性を検討した。ベンザインの3重結合部分とオレフィンの2重結合部分を反応中心として取り扱うONIOM計算を行ったところ、無置換の場合には全系を高精度で行った結果とよい一致を示したが、置換基を導入した場合では、反応中心の選び方に注意する必要があることが分かった。以上の結果は、今後ONIOM法を様々な置換基を持つベンザインとオレフィンとの反応に適用する上での指針を与えるものである。
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