1999 Fiscal Year Annual Research Report
積層荷電イオン素子におけるイオン輸送ベクトルの温度刺激同調制御
Project/Area Number |
11167257
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
比嘉 充 山口大学, 工学部, 助教授 (30241251)
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Keywords | 温度応答性 / イオン / 輸送 / ベクトル / 制御 / 膜 |
Research Abstract |
ポリビニルアルコール(PVA)にN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)とメタクリル酸をグラフト重合したポリマーのDMSO溶液をキャスト製膜し、グルタルアルデヒド溶液で架橋を行うことで温度応答性荷電膜を作製した。この膜の電荷密度は下限臨界溶解温度(LCST)以上で急激に減少し、25℃における膜荷電密度が40℃の時よりも15倍高い値となった。温度増加に対してこの感温性荷電膜の荷電密度が低下する原因は、LCST以下の温度ではNIPAAmが親水性であるため、グラフト重合鎖はPVA網目中に存在する水相に溶解するが、LCST以上の温度ではNIPAAmが疎水性となるためPVA網目中では疎水性相と親水性相に相分離し、このときNIPAAm-MAcグラフト重合鎖に固定された荷電基の一部がこの疎水性相の中にとじ込められるためであると考えられる。この膜を用いてKCl、CaCl_2混合溶液の拡散透析系において温度を変えて透過実験を行った。40℃では低濃度側でのK^+,Ca^<2+>イオン濃度は時間とともに増加し、これより両イオンが受動輸送していることが判明した。しかし、25℃における透過実験では、時間とともに低濃度側のK^+イオン濃度は増加するが、Ca^<2+>イオン濃度は減少しており、これはCa^<2+>が濃度勾配に逆らって低濃度側から高濃度側へとUphill輸送されていることを示している。これらの結果は、感温性荷電膜を用いることで、2価イオンの輸送ベクトルを温度変化により制御できることを示している。
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