1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11168232
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
長尾 隆司 金沢工業大学, 工学部, 助教授 (70113595)
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Keywords | 動機づけ / 性行動 / 闘争行動 / 攻撃性 / 隔離飼育 / 社会的経験 / 神経ホルモン |
Research Abstract |
クロコオロギの雄は、他の雄に出会うと必ず闘争行動を行う。勝敗はお互いの攻撃性の高さに依存し、攻撃性はそのときのコオロギの内部状態によって様々に変化する。生育環境が発育と闘争行動におよぼす影響を調べるために、飼育状態を集団飼育と単独隔離飼育に分けた。その結果、隔離個体は集団個体に比べ体色が黒く大きく育った。 体重差が200mg以上の場合、体重の重い個体が勝つ傾向が顕著に現れた。集団個体間ではディスプレイ中心の穏やかな闘争に対し、隔離個体間では接触の多い激しい闘争が頻繁に見られた。体重差を100mg以内にして闘わせ、攻撃性のレベルを7段階に分けて定量化した結果、ふ化後の隔離期間の長いものほど攻撃性が高いことが明らかになった。透明なケースで隔離飼育した"Internet cricket"は、集団個体や遮光隔離個体よりもはるかに高い攻撃性を示すだけでなく、集団個体は決して手を出さない雌に対しても同様に攻撃を行った。 Internet cricketの雌に対する攻撃は、成虫になって(羽化して)3日目まで頻繁に観察されるがその後しだいに減少し、羽化後6日目以降はまったく見られなくなった。集団個体は羽化してすぐには性行動を示さないが、2日半ほどで交尾を完了するようになるのに対し、Internet cricketは2日目までは攻撃をするがまったく交尾できず、6日半後にようやく交尾できるようになった。このように、Internet cricketは、雌との社会的経験を重ねるにつれ攻撃行動を減少させていく一方で、それとは相反的に性行動を発達させていくことがわかった。 以上の結果から、社会的環境刺激の遮断がコオロギの攻撃性と性行動の発達に大きい影響を与えることが明らかになった。しかし、単に隔離が攻撃性や行動の発達に影響するということではない。同じ隔離でもInternet cricketはまったく抑制のかからない攻撃性を示し続けた。雌に対する攻撃をも含めて考えると、攻撃性は単に隔離による感覚系の遮断の程度に依存するだけではなく、感覚入力に対する個体の反応の不整合性を原因とするストレスをも反映していると考えられる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] T.Nagao: "Effects of social experience on aggressiveness and development of the sexual behavior in male crickets"Comp.Biochem.Physiol.. 124A. S57 (1999)
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[Publications] T.Ngago: "Effects of social experience on aggressiveness in male crickets"Proc.24th.Ann.Meet.Jap.Soc.Comp.Physiol.Endocrinology.. 14号. 11 (1999)
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[Publications] 長尾隆司: "環境昆虫学"東京大学出版会. 14 (1999)