2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11168232
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
長尾 隆司 金沢工業大学, 工学部, 教授 (70113595)
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Keywords | 動機づけ / 性行動 / 闘争行動 / 攻撃性 / 隔離飼育 / 社会的経験 / 神経ホルモン |
Research Abstract |
透明なケースで隔離した"Internet cricket"は,集団個体や遮光隔離個体よりもはるかに高い攻撃性を示すだけでなく,雌に対しても激しい攻撃を行い,交尾ができるまでに集団個体の倍の時間を要する。このような"Internet cricket"の激しい攻撃性や性行動の発達の遅れには,生育時の社会的経験,とりわけ接触刺激の遮断が深く関わっていると考えられるので,部分的な接触が可能な金網隔離飼育を行い,性行動の発達と雌に対する攻撃について調べた。その結果,金網隔離個体の性行動の発達は,集団個体よりは遅く,"Internet cricket"よりは早かった(羽化後4.5日)。金網隔離個体は,攻撃性は低いがやはり雌への攻撃を行った。雌への攻撃は性行動の発達に相反するかのように羽化後の時間経過とともに減少し,4.5日には全く見られなくなった。 遮光隔離や金網隔離のコオロギは攻撃性が高くはなかったが,羽化直後しばらくは雌を攻撃した。したがって,雌への攻撃の原因が高い攻撃性にあるとは考えにくい。どの隔離コオロギにおいても性行動の発達と雌への攻撃の相反的な傾向が見られたことから,性行動のプログラムと闘争行動のプログラムの切り換えを調節する機構が存在し,生育時の社会的経験がその調節に深く関わっていると考えられる。 集団個体も交尾直後から30分ほどの間は,高い攻撃性を保持した。したがって,攻撃性には持続性のあるものと一時的なものの2種類があると考えられる。しかし,攻撃性を生み出すしくみが2種類あるとは考えにくい。短期的な攻撃性の変化は,攻撃性を調節する神経ホルモンの合成や分解によって決まっているのだろう。一方の持続性のある攻撃性は,そのような神経ホルモンの量的な変化によって決まるのではなく,それを受けとめる受容体(receptor)の数によって決まっているものと考えられる。これらの検証のためには,社会的環境要因を制御した場合のコオロギの攻撃性を行動レベルで解析するとともに,中枢内の神経ホルモンの変化を分析することによって,攻撃性の実体を物質レベルで明らかにする必要がある。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] T.Nagao: "Tactile communication contributes the development of instinctive behavior in male crickets."Comp.Biochem.Physiol.. 127A. 385 3P16 (2000)
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[Publications] J.Shirai: "Aggression upon females induced by environmental factors in male crickets."Comp.Biochem.Physiol.. 127A. 385 3P17 (2000)
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[Publications] K.Sasaki: "Brain amine levels associated with change of caste in worker honeybees."Comp.Biochem.Physiol.. 127A. 385 3P18 (2000)
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[Publications] 長尾隆司: "バイオミメティックスハンドブック(第9章3-1)"エヌ・ティー・エス. 6 (2000)
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[Publications] 長尾隆司: "バイオミメティックスハンドブック(第9章3-3)"エヌ・ティー・エス. 5 (2000)