2001 Fiscal Year Annual Research Report
生体超分子複合体の構造解析への多波長異常分散法の利用
Project/Area Number |
11169202
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中川 敦史 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教授 (20188890)
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Keywords | 生体超分子複合体 / 多波長異常分散法 / シンクロトロン放射光 / X線結晶構造解析 / タンパク質複合体 |
Research Abstract |
多波長異常分散法は,1種類(場合によっては1個)の結晶で構造解析が可能な,迅速かつ確実な位相決定法であるが,異常分散効果による回折強度差は小さく,分子量数万程度タンパク質にしか適用されていない.分子量の大きな生体高分子複合体に多波長異常分散法を適用するためには,より精度の高い回折強度データ収集を行う必要がある. 本年度の研究では,SPring-8の生体超分子ビームライン(BL44XU)において,多波長異常分散法を高分子量タンパク質複合体に適用するための回折強度データ収集システムの改良を行った.具体的には,4象限スリットを導入した.結晶の大きさにあったビームサイズの最適化を行うことにより,特に50μm以下の微小結晶に対して,S/Nが改善されることを確認した.4象限スリットを利用することにより,この他にこれまで低分解能領域に見られたコリメータの出口からの散乱によるバックグラウンドを完全に除去することができた.また,1msecでの制御が可能なシャッターを導入した.高速シャッターの利用により,微小振動写真法によるデータ収集や部分反射のデータの質の改良が期待できる.このためのソフトウェアの開発は継続中である. アンジュレータからのX線は,ほぼ完全な直線偏光を示す.多波長異常分散法による位相決定の際,現在利用されているソフトウェアでは,偏光に基づく異常分散項の異方性は無視されている.また,偏光特性により回折強度にも異方性が生じる(この効果は通常強度データ処理の際に補正されている).そこで,東京大学の雨宮らが開発した偏光解消子を用いて無偏光状態の入射X線を作り出し,多波長異常分散法に与える影響を調べた.テストに用いた結晶が等軸性のものであったため異常分散項の異方性による影響を調べることはできなかったが,回折強度の異方性に与える影響を調べることができた.この結果,偏光解消子により無偏光状態にした方が,より精度の高い回折強度データを得ることができた。
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[Publications] Y.Yamagata, K.Ogasahara, Y.Hioki, S.J.Lee, A.Nakagawa, H.Nakamura, M.Ishida, S.Kuramitsu, K.Yutani: "Entropic Stabilization of the Tryptophan Synthase a-Subunit from a Hyperthermophile, Pyrococcus furiosus : X-ray Analysis and Calorimetry"Journal of Biological Chemistry. 276. 11062-11071 (2001)
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[Publications] 中川敦史: "X線結晶構造解析"RADIOISOTOPES. 50周年記念号. 78S-84S (2001)
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[Publications] Atsushi Nakagawa et al.(eds.A.Messerschmidt, R.Huber, T.Poulos, K.Wieghardt): "Handbook of Metalloproteins"John Wiley & Sons, Ltd. 1449 (2001)