1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11170210
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
真鍋 俊也 神戸大学, 医学部, 教授 (70251212)
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Keywords | シナプス伝達 / 細胞接着分子 / カドヘリン / 長期増強 / 海馬 / 可塑性 / 電気生理学 / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
1.中枢神経系の海馬は記憶や学習において重要な役割を果たすことが知られている。海馬の興奮性シナプスでは神経伝達物質はグルタミン酸であり、シナプス前終末から放出されたグルタミン酸はシナプス後細胞のグルタミン酸受容体であるAMPA受容体およびNMDA受容体に結合し、様々な生理的反応を引き起こす。特に、シナプスが高頻度で活性化すると、その伝達効率が長時間にわたって増大する長期増強(LTP)という現象が誘導され、これが記憶形成の基礎過程であると考えられている。その誘導にシナプス後細胞のNMDA受容体の活性化とそれに引き続く細胞内蛋白リン酸化酵素の活性化が必要であり、活性化した酵素がシナプス後細胞におけるAMPA受容体応答を変化させることでLTPが発現する。しかし、このLTP誘導の主要経路に加え、LTPの形成を修飾する機能蛋白分子が多数存在することが最近のノックアウトマウスを用いた研究から明らかになりつつある。2.細胞接着分子であるカドヘリン11(cad11)あるいはテレンセファリン(TLCN)をノックアウトマウスでは、LTPが野生型マウスに比べて約2倍に増大していることがわかった。しかも、いずれのマウスでも、高頻度刺激を繰り返し与えた際のLTPの飽和レベルが野生型よりも有意に高かった。したがって、これらの接着分子が欠損すると、シナプス伝達効率の可変域が増大することが示唆された。3.また、cad11欠損マウスでは、行動学的に情動の異常が観察され、TLCN欠損マウスでは、ある種の学習・記憶テストで成績の向上が観察された。Cad11とTCLNは、いずれも正常動物において可塑的な変化を抑制していることが明らかとなった。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Kobayashi, K.: "Platelet-activating factor receptor is not required for long-term potentiation in the hippocampal CA1 region"Eur. J. Neurosci.. 11. 1313-1316 (1999)
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[Publications] Kobayashi, K.: "Calcium-dependent mechanisms involved in presynaptic LTD at the hippocampal mossy fiber-CA3 synapse"Eur. J. Neurosci.. 11. 1633-1638 (1999)
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[Publications] Sakaguchi, G.: "Doc2α is an activity-dependent modulator of excitatory synaptic transmission"Eur. J. Neurosci.. 11. 4262-4268 (1999)
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[Publications] Manabe, T.: "Regulation of long-term potentiation by H-Ras through NMDA receptor phosphorylation"J. Neurosci.. (in press). (2000)
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[Publications] Manabe, T.: "Loss of cadherin-11 adhesion receptor enhances plastic changes in hippocampal synapses and modifies behavioral responses"Molecular and Cellular Neuroscience. (in press). (2000)