1999 Fiscal Year Annual Research Report
精神分裂病とそのモデルとしてのノックアウトマウスの総合的比較・分析
Project/Area Number |
11170219
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
染矢 俊幸 新潟大学, 医学部, 教授 (50187902)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
那波 宏之 新潟大学, 脳研究所, 教授 (50183083)
高橋 均 新潟大学, 脳研究所, 教授 (90206839)
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Keywords | 精神分裂病 / ノックアウトマウス / Src / Fyn / PPI / 驚愕反応 |
Research Abstract |
精神分裂病(以下分裂病)の分子メカニズムを解明する上で、ヒトで起こっている分子変化を据えると同時に、その分子の動物固体に与える影響について解析することが重要であり、発症原因に基づく動物モデルの構築にヒントを与えるものと考えられる。Fynは、脳に強発現するSrc familyのチロシンリン酸化酵素の一つであり、神経系の発達や可塑性形成に重要な役割を持つ神経栄養因子やその他の成長因子によって活性化される。また、Fyn欠損マウスは、成体の海馬において層構造の異常や行動学的な異常も報告されている。そこで今回我々は、神経発達障害仮説に基づき、Fyn欠損マウスが分裂病のモデルとして有用かどうかを検証する目的で、分裂病患者でもその異常が報告されている、prepulse inhibition (PPI)を、音刺激驚愕反応を指標に検討した。Fyn欠損マウスに対し、MK-801(0.1mg/kg,s.c.)投薬後のPPIについても検討した。同時に、Fyn欠損マウスにおける脳内シナプス関連タンパク量変化を坑NMDAR1,NMDAR2A/B、GluR1,GluR2/3およびGAD抗体を用いたウエスタンブロット法にて検討した。Fynホモ欠損マウスは、音刺激に対する驚愕反応が、その他の遺伝子型およびコントロール動物よりも高い傾向を示したが、PPIは障害されることなく、逆に増加していた。これは以前から報告されているFyn欠損マウスのストレスに対する感受性の高さによるものと考えられた。一方、MK-801の投薬により、Fynホモ欠損マウスはその他の遺伝子型およびコントロール動物に比べ驚愕反応がより増大し、PPIもより強く障害を受けた。以前我々は、生後間もなくのFyn欠損マウスの大脳皮質におけるグルタミン酸受容体タンパクの減少について報告しているが、今回の成体脳を用いた結果では有意義な変化は認められず、Fyn欠損マウスでみられたMK-801への感受性の違いは、皮質領域でのグルタミン酸受容体の量的変化が反映する可能性は少ないものと考えられた。以上の結果から、Fyn分子は分裂病の発症原因因子とはならないと考えられた。しかし、Fynの発現異常は過度のストレス負荷が引き金となり、病態発症におけるリスクファクターである可能性が示唆された。
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