1999 Fiscal Year Annual Research Report
アセチルコリンによるシナプス反応の制御:神経終末におけるCa2+流入の抑制と促通
Project/Area Number |
11170233
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 文隆 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (00202044)
|
Keywords | ACh / 皮質内情報処理 / ムスカリニック / ニコチニック / 入力由来依存性 / 皮質内由来入力 / 視床由来入力 / 光学的計測 |
Research Abstract |
大脳皮質には前脳基底部よりアセチルコリン(ACh)含有繊維の密な投射を受けるが、皮質内情報処理をAChがどのように制御するかについては未だに不明な点が多い。研究代表者は以前に培養細胞を用いた実験において、AChがEPSP,IPSPをほとんどの例において抑制することを見いだした。本実験ではこの結果に基づき、神経終末におけるAChによるCaの流入の制御とその生理的意義を明らかにする目的で研究を進めている。本年度はAChによるを皮質内で興奮伝播に対する作用について検討した。ラット及びネコの皮質視覚野から切片標本を作製し、膜電位感受性色素を用いた光学的計測により、興奮伝播を観察した。同時に電場電位を記録し、光学的計測により得られた結果が電気生理学的にも裏付けられるかどうかも検討した。まず、切片標本上でAChによる抑制の用量依存性を調べた。その結果、抑制に関してはEC50は約45μMであった。次に、興奮伝播については白質刺激に白質刺激に対しては全層にわたり抑制したが、その程度はIV層を中心とする中間層で最も弱いことが判った。しかしながら、II/III層刺激に対してはどの層も同程度に抑制した。また、この抑制はムスカリニック受容体を介してシナプス前性であることも明らかとなった。さらに、ニコチンの投与により、白質刺激に対して促通作用をもつ例を記録することができた。この点については現在、視床一皮質切片標本を用いてさらに検討中であるが、同様の結果を得ている。すなわち、皮質内入力とは対照的に視床由来の入力に対してはAChは促通作用を持つ可能性が示された。これより、AChは皮質内で入力の由来に応じてその効果が異なることが考えられる。つまり、前脳基底部由来のコリン作動性細胞は皮質細胞に対して、上行性繊維由来入力を皮質内由来入力に対して相対的に優位にする作用を持つことが示唆された。
|
-
[Publications] Kumura, E., Kimura, F., Taniguchi, N. and Tsumoto, T.: "Brain-derived neurotrophic factor blocks long-term depression in solitary neurones cultured from rat visual cortex"J. Physiology (London). 524. 195-204 (2000)
-
[Publications] Kimura, F., Fukuda, M. and Tsumoto, T.: "Acetylcholine suppresses the spread of excitation in the visual cortex revealed by optical recording : Possible differential effect depending on the source of input"European Journal of Neuroscience. 11. 3597-3609 (1999)
-
[Publications] Yoshimura, Y., Kimura, F., and Tsumoto, T.: "Estimation of single channel conductance underlying synaptic transmission between pyramidal cells in the visual cortex"Neuroscience. 88. 347-352 (1999)