1999 Fiscal Year Annual Research Report
脳神経系の分子レベルでの機能解析を目指す精密有機合成化学的アプローチ
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11170243
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
岩渕 好治 長崎大学, 薬学部, 助教授 (20211766)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
畑山 範 長崎大学, 薬学部, 教授 (20143000)
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Keywords | Dysiherbaine / 興奮性神経毒 / アミノ酸 / グルタミン酸受容体 / アゴニスト / アンタゴニスト / 神経薬理学 / 不斉合成 |
Research Abstract |
高等動物の中枢神経系における興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸は、記憶や学習といった高次神経機能の形成に深く関与しており、現在、その分子レベルでの理解を目指し精力的な研究が続けられている。これまで種々のグルタミン酸レセプターがクローニングされ、また、様々なサブグループ特異的アゴニスト、アンタゴニストが開発され、活用されているが、複雑を極める脳機能の精密な解析を進めるためには、より特異性の高い、受容体の機能特異的なアゴニスト、アンタゴニストの開発が必要となると考えられる。我々は、Dysiherbaineという新規海洋酸神経毒の特異な生理活性に興味を抱き、本化合物に基づく新規な神経薬理学ツールの作製を目指して研究を行ってきた。Dysiherbaineは1996年にミクロネシア産海綿(Dysideaherbacea)から単離、構造決定された新規異常アミノ酸であり、興奮性神経毒として知られるカイノイドアミノ酸と類似する極めて強力な神経毒作用を示すことが明らかとなっている。本化合物は、構造的にこれまでに全く例のない神経毒として大きな注目を集めており、グルタミン酸レセプターと脳疾患との関連性、グルタミン酸レセプターのアンタゴニストの構造デザインなど、神経薬理学の分野で今後幅広く活用されることが期待される。我々は、ごく最近、その最初の全合成を達成し、この天然物の絶対構造を(2S,4R,6R,7R,8R,9S)配置と決定するとともに、各種誘導体の量的供給を可能とする合成経路の確立に成功した。この結果については投稿中である。現在、dysiherbaineを始め、合成研究中に得られた種々の関連化合物についてその神経薬理学的解析を進めている。
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