1999 Fiscal Year Annual Research Report
neuronal identity決定の機構-神経発生と高次脳機能の接点の解明-
Project/Area Number |
11170251
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
斎藤 哲一郎 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 助手 (00202078)
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Keywords | 神経細胞 / 発生・分化 / 高次脳機能 / PCR法 / 電気穿孔法 / ホメオブックス遺伝子 |
Research Abstract |
脊椎動物の神経系には、多種多様な神経細胞が存在し、その多様性に高次脳機能は支えられている。この多様な神経細胞の個々の性質、つまりneuronal identityが分子レベルでいかに決定されるのかを明らかにするため、個々の神経細胞で特異的に発現する遺伝子ファミリーをdifferential PCR(dPCR)法で探索した。Bar型ホメオボックス(BarH)遺伝子は、ショウジョウバエ網膜等の神経系細胞の発生・分化で機能し、我々が以前にクローニングした哺乳動物のBarH遺伝子MBH1も、特定の神経細胞群で特異的に発現する。今年度は、さらに解析を進め、哺乳動物の新しいBarH遺伝子MBH2をクローニングすることに成功した。MBH2タンパク質は、線虫やハエのタンパク質より、MBH1タンパク質と最もよく似ており、このことからMBH1とMBH2の両遺伝子は、脊椎と無脊椎動物の分岐後に派生したと考えられる。MBH2は、MBH1と同様に、間脳等の神経系で特異的に発現する。しかし、ショウジョウバエのBarH1とBarH2が、同一染色体上に並んで存在し、ともに同一細胞の同時期に発現するのに対し、MBH1とMBH2は、異なる染色体上にマップされ、異なる領域で発現することが明らかになった。 また、得られた遺伝子の解析実験系として、電気穿孔法でマウス胎仔の神経組織へ高効率で遺伝子導入し、遺伝子導入後の胎仔を出生後も生育させる系を確立することに成功した。これにより、大脳皮質から、海馬、中脳、脊椎にいたる神経組織の特定部位で特異的に目的の遺伝子を発現させることが可能となり、遺伝子機能を個体レベルで解析することが出来るようになった。
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