2002 Fiscal Year Annual Research Report
植物―病原微生物の分子応答機構の解明 -耐病性植物の創出に向けて-
Project/Area Number |
11185101
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上田 一郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (10113523)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 英樹 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (20197164)
渡辺 雄一郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (60183125)
白石 友紀 岡山大学, 農学部, 教授 (10033268)
眞山 滋志 神戸大学, 農学部, 教授 (00112251)
露無 慎二 静岡大学, 農学部, 教授 (30090541)
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Keywords | 病原微生物 / 相互作用 / 耐病性 |
Research Abstract |
病原体の攻撃に対して、植物が抵抗性を発揮して、感染を阻止する分子機構を解明して、来る21世紀に想定される人口増加に伴う食糧問題に備え、耐病性分子育種への指針を示すことを目的とした。植物の耐病性を増強することは、農薬使用を軽減した環境保全型農業を目指す上でも、欠くことが出来ない。本領域は、1)植物が病原微生物を認識し、シグナル伝達系を通じて、種々の防御応答が発現する一連の分子機構の解明と2)病原微生物が宿主因子と相互作用して発現させる病原性や宿主の抵抗性の分子機構の解明を行っている。 このため、1)糸状菌・細菌感染に対する応答機構と、2)ウイルス感染に対する応答機構の、大きく二つの研究班を組織した。多様な植物に多様な病原微生物が存在しており、その組み合わせによって、発現する病原性と防御応答も一つではない。しかし様々な組み合わせにおいても分子機構を解明する過程で共通の防御応答が見えてくると確信している。本特定領域では、こうした多様な側面を研究する研究者が一同に会して最新の情報を共有することで、防御応答のいくつかの本質を見極められることが重要である。このために病原体認識の初期応答から宿主の防御応答の発現まで多様な側面をカバーするよう計画研究を組織した。合同研究会議2回、若手研究会、公開シンポジウムを行った。またニュースレター8から10号を刊行した。 防御応答を司る植物遺伝子や、病原体-植物相互作用の重要な分子がいくつか単離されたかあるいは単離されつつある。これまでに、植物は外界から侵入する病原菌を植物独自の小器官である細胞壁(結合型NTPase)で認識することが明かとなった。この結果細胞壁酸化還元酵素群が活性化され、極めて早い防御応答が引き起こされる。さらに感染初期防御応答で、カルシウムチャンネルが重要な役割を担っていることを発見し、これが全身獲得抵抗性の重要なシグナルとしてはたらいていることが示唆された。宿主特異性に関する研究では、毒素感受性の分子機構の一つが明らかにされた。すなわち、柑橘brown spot病菌の生産するACR毒素のターゲット分子を探索し、植物ミトコンドリア病の本質をつきとめた。またウイルス遺伝子発現を抑制する宿主因子が特定され、さらにウイルス感染に応答する過敏感反応を制御する遺伝子も単離された。これらの成果から耐病性戦略がいくつか考えられるようになってきた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Sekiguchi, H.: "The 3'terminal region is strictly required for clover yellow vein virus genome replication"Arch. Virol.. 148(印刷中). (2003)
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[Publications] Sasabe, M.: "CDNA cloning and characterization of tobacco ABC transporter : NtPDRI is a novel elicitor-responsive gene"FEBS Letters. 518. 164-168 (2002)
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[Publications] Kawakami, K.: "Defective Tobamovirus Movement Protein Lacking Wild Type Phosphorylation Sites can he Complemented by Substitutions found in Revertants"J. Virol.. 77. 1452-1461 (2003)
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[Publications] Takahashi, H.: "RCYI, an Arabidopsis thaliana RPP8/HRT family resistance gene, conferring resistance to Cucumber mosaic virus required salicylic acid, ethylene and a novel signal transudation mechanism"Plant J.. 32. 655-667 (2002)
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[Publications] Yao, N.: "Mitochondrial oxidative burst involved in apoptotic response in oats"Plant J.. 30. 569-579 (2002)
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[Publications] Goto, K.: "A Simple and Rapid method to Detect Plant siRNAs Using Nonradioactive Probes"Plant Mol. Biol. Rep.. 21. 1-8 (2003)