2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11208204
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
神田 啓史 国立極地研究所, 極域観測系北極観測センター, 教授 (70099935)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森脇 喜一 国立極地研究所, 教育研究系, 教授 (50033501)
増沢 武弘 静岡大学, 理学部, 教授 (40111801)
三浦 英樹 国立極地研究所, 教育研究系, 助手 (10271496)
内田 雅己 国立極地研究所, 教育研究系, 助手 (70370096)
加藤 明子 国立極地研究所, 教育研究系, 助手 (80261121)
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Keywords | 高緯度北極 / 氷河後退域 / 一次遷移 / 多様性 / 土壌微生物 / コケ / マッドボイル / バイオマス |
Research Abstract |
平成16年度は以下の点について明らかにした。 1.氷河が後退してまもない場所から数万年経過した場所へ向けて、植物の被度および種数は増加する傾向が認められた。維管束植物は氷河後退後数千年以上を経過しても遷移は進行していると考えられたのに対し、土壌中の菌類と細菌類の比は、数千年経過するとその後はほぼ一定であることが明らかとなり、植物の遷移と菌類の遷移には時間的な差が生じている可能性が明らかとなった。 2.土壌微生物バイオマスは、氷河末端付近では非常に少なかったが、数千年から数万年経過した場所においては、同程度だった。土壌炭素および窒素と土壌微生物バイオマスの指標である脂肪酸量との間に正の相関が認められたことより、土壌中の基質の量が微生物バイオマスを制限している要因の一つであると考えられた。 3.コケ植物のイワダレゴケは湿地から乾燥地まで幅広い水分環境に生息している。本種の生理特性を調査したところ、乾燥地に生育するコケは湿地に生息するコケよりも、光合成活性の最適含水比は低く、光合成活性の検出限界に達する含水比も小さかった。このことから、イワダレゴケは光合成特性を水分環境の変化に伴って巧みに変化させていることが明らかとなった。 4.周氷河現象であるマッドボイルの活動度と、氷河の後退年代との間にはある一定の関係は認められなかった。マッドボイルのサイズは土壌の物理性によって異なる傾向が認められた。植物の被度はマッドボイルの活動が活発なときには低下したが、活動が弱まるに従って高くなったことから、マッドボイルの活動は植生の被度に大きく影響していることが明らかとなった。 5.氷河後退後数十年から数百年経過した場所においては、湿性立地における植物バイオマスは、氷河後退年代が同時期の乾性湿地と比較すると、植物バイオマスは多い傾向が認められた。この傾向は氷河後退後の経過時間が短いほど顕著であり、水分環境は遷移初期の植物バイオマスに大きく影響することが明らかとなった。
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Research Products
(12 results)