1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11211203
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (B)
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Research Institution | The High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
池田 進 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (80132679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門野 良典 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (10194870)
鳥飼 直也 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助手 (70300671)
川合 將義 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (10311127)
武田 定 群馬大学, 工学部, 助教授 (00155011)
野田 幸男 東北大学, 科学計測研究所, 教授 (80127274)
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Keywords | パルス中性子 / 水素 / 誘電体 / ダイナミクス / 動的構造 / MAPS / 日英協力 |
Research Abstract |
水素結合系結晶の物性を支配する水素のポテンシャルを明らかにし、水素の運動と配置の局所的な振る舞いを理解することは、結晶中の局所構造や水素結合の化学物理の研究分野において重要である。本研究では中性子散乱法を用いて様々な結晶の局所構造の研究を推し進めてきたが、特に氷結晶とKDP等の水素結合系物質の水素のダイナミックスに関して全く新しい発見をしてきたので、以下に概要を報告する。 通常の氷であるiceIh(水素の配置が無秩序)と水素を秩序化させた氷(iceXI)の非弾性中性子散乱の実験結果から、プロントの励起エネルギーは水分子の配向に大きく依存することを発見した。さらに、運動量に対するエネルギーの分散関係を幅広いエネルギー領域で測定することに世界に先駆けて成功し、iceIh及びiceXIの50-70meVおよび70-90mevのエネルギー領域においてプロトンの振動に起因する光学モードが存在することを発見した。従来、50-90meVの領域における励起は水分子の孤立した回転運動(Librational mode)であると考えられてきたが、本結果はプロントがC軸方向に対して相関を持つ集団的な運動を有することを初めて示した。この新たに発見された分散関係の理解は氷中のプロトンの挙動に対して新知見をもたらし、水素結合や水分子の研究分野において極めて重要といえる。 また、KDPを重水素化した結晶(DKDP)の非弾性散乱の測定から、20-30meVにおいて重水素の秩序化に伴って変化する光学モードを発見した。この光学モードの解析に基づいて、新しい水素結合ダイナミックスのモデルを提唱し、このモデルを用いたシミュレーションから長年未解決の問題であった水素の共鳴状態の原因を特定した。さらに、アモルファス化させたDKDPの非弾性散乱の測定から音響モードの分散関係とボゾンピークを発見し、これらのモードの解析から複雑な水素結合系における水素のダイナミックスを解き明かしている。
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[Publications] F.Izumi: "Neutron diffraction study of the Phase Transition in K2Mn2(SO4)3"J Phys Chem Slids. 60. 1423-1426 (1999)
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[Publications] H.Fukazawa: "Inocherent inelastic neutron scattering measurements on Dome-Fuji Antarctic ice"Earth Planet Sci Lett. 481-487. 171 (1999)
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[Publications] T.Ikeda: "Extreme fractionation of gases coused by formation of clathrate hydrates in Vostok Antrarctic ice"Geophysical Research Letters. 91-94. 26 (1999)