1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11215201
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小川 哲生 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (50211123)
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Keywords | 低次元電子-格子系 / 光誘起構造変化 / 非平衡相転移 / ドミノ倒し機構 / 断熱-透熱クロスオーバー |
Research Abstract |
非平衡状態を経由した相転移には,光照射によって結晶構造やユニットセル構造が変化する光誘起構造相転移の例が多い。その普遍的素過程を明らかにするのが本研究の目標である。本年度は,光励起状態を経由した相転移現象の研究を,1次元局在電子格子モデルを用いて行った。特に,サイト間の相互作用の性質(強度や到達距離など)と非平衡光誘起相転移ダイナミクスとの関連を,現象論的立場から解明した。励起光が弱い極限(1サイト励起極限)を詳しく調べ、サイト間結合強度と相互作用到達距離との空間上での「相図」を得た。結合強度が弱い場合は,励起された1サイトのみが局所構造変化を起こした状態が準安定であるのに対し,結合強度が強くしかも長距離力の場合は,すべて元の状態に戻ってしまうことが明らかになった。ドミノ倒し効果によって大域的構造転移が生じるのは,相互作用距離が短距離で,ある程度強結合の場合のみに限られる。これは平均場近似では記述できない結果である。さらに,断熱近似を適用した場合と,透熱近似の場合とを系統的に比較し,定性的に異なる2種のドミノ倒し効果を発見した。モンテカルロ法による大規模な数値計算は,酒井治先生(東京都立大学理学部)との共同研究の形を取りながら連携して進めている。他方,非平衡状態での相転移を議論するプロトタイプモデルとして,励起子のような寿命を伴う粒子の相分離(スピノーダル分解)ダイナミクスを追跡する理論を構築した。本理論では,平均場描像では落とされている空間相関情報を,2点相関関数のフーリエ変換である動的構造因子に取り込む。系の時間空間発展は,動的構造因子と1点分布関数との連立時間発展方程式として,閉じた方程式系で記述されることになる。寿命による粒子消滅と光照射による粒子生成の効果とを取り入れる点が新しい試みである。
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[Publications] K.Koshino & T.Ogawa: "Theory of the photoinduced spin-state transitions in spin-crossover complexes"Journal of Luminescence. (発表予定). (2000)
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[Publications] Y.Ogawa et al.: "Dynamical aspects of the photoinduced phase transition in spin-crossover complexes"Physical Review Letters. (発表予定). (2000)
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[Publications] K.Koshino & T.Ogawa: "Electronic phase conversion by photoinduction of excitations"Physical Review B.. (発表予定). (2000)