2001 Fiscal Year Annual Research Report
放射光と可視レーザー光との組み合わせによる新しい分光法
Project/Area Number |
11215210
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
鎌田 雅夫 佐賀大学, 理工学部, 教授 (60112538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 和敏 岡崎共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (30332183)
田中 耕一郎 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90212034)
大柳 宏之 独立行政法人新産業技術総合研究所, 電子基礎部, 主幹研究員
江田 茂 佐賀大学, 理工学部, 助手 (50311189)
小川 博司 佐賀大学, 理工学部, 教授 (10039290)
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Keywords | 光誘起相転移 / 放射光 / EXAFS / レーザー組み合わせ / Surface Photovoltage / 時間分解光電子分光 / スピンクロスオーバー錯体 / GaAs |
Research Abstract |
本研究は、光誘起構造変化の微視的機構を解明する方法論を確立するために、(1)新しいポンプ・プローブX線分光法、(2)可視レーザーと放射光の組み合わせに基づく新しい内殻光電子分光法や蛍光分光法を開発することを目標として掲げている。 そのため、(1)高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所のビームラインBL13にあるX線分光システムにGe100ピクセルアレイ検出器の信号処理を設置し、高速・高密度で計測するためのハイブリッド計測システムを構築し、それを用いて、試料からのX線励起蛍光の検出を行った。その結果、カルコゲンガラス(As2Se3)の低温での光照射時の局所構造はカルコゲン原子に高配位欠陥対が形成されること、a-Seと異なり中性欠陥対(C03-C03)ではなく電荷を持った欠陥対(C+3-P2,PはAs原子)であることを見出した。また、スピンクロスオーバー錯体、Fe(2-pic)3]Cl2EtOHのスピン状態に対応した局所構造の変化をFe K-EXAF、XANESスペクトルにより調べ、低スピン状態の強い配位子場の変化を明らかにした。また、光誘起構造相転移についても実験を行い、低温における光照射で局所構造が変化することを確認した。 一方、(2)岡崎国立共同研究機構分子科学研究所のビームライン5Aにおいて、可視レーザーと放射光の組み合わせに基づく新しい内殻光電子分光システムを完成させるとともに、新たにビームライン6A2に微小試料用の内殻光電子分光システムを構築した。これらのシステムを用いて、GaAs超格子表面の光誘起起電力効果の測定を行った。また、スピンクロスオーバー錯体Fe(2-pic)3]Cl2EtOHのレーザーポンプ・放射光プローブによる光電子分光実験を行い、光誘起相の電子状態が高温相や低温相とは異なっていることや特異な温度依存性を示すことなどを見出した。 さらに、(3)京都大学理学研究科において、種々の光誘起現象を惹き起こす試料作成とラマン散乱や電子スピン共鳴などの測定を行い、スピンクロスオーバー錯体の光誘起相は、通常の温度相転移で実現される相とは明らかに異なっており、低対称性が生じていることなどを見出した。 また、(4)佐賀大学理工学部においては、九州初の放射光施設や自由電子レーザーを用いた研究発展の可能性について検討を行った。 以上の成果は、国際会議や研究会で報告すると共に論文発表し、高い評価を受けた。
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[Publications] M.Kamada et al.: "Beam-line systems for pump-probe photoelectron spectroscopy using SR and laser"Nuclear Instruments and Methods. A467/468. 1441-1443 (2001)
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[Publications] S.Asaka et al.: "Optical detection system using time structure of UVSOR for combined laser-SR experiments"Nuclear Instruments and Methods. A467/468. 1455-1457 (2001)
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[Publications] S.Asaka et al.: "Ultraviolet light amplification within a nanometer-sized layer"Phys.Rev.B. 63. 81104-81106 (2001)
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[Publications] S.Tanaka et al.: "Surface photovoltage effects on p-GaAs(100) from core-level photoelectron spectroscopy using synchrotron radiation and a laser"Phys.Rev.B. 64. 1553081-1553086 (2001)
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[Publications] T.Tayagaki, K.Tanaka: "Photoinduced phase transition to a new macroscopic spin-crossover-complex phase"Phys.Rev.Left.. 86. 2886-2889 (2001)
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[Publications] T.Tayagaki et al.: "Symmetry lowering in the photoinduced phase in spin-crossover-complexes"International Journal of Modern Physics B. 15. 3709-3713 (2001)