2000 Fiscal Year Annual Research Report
微生物産生共重合ポリエステルの微細構造と物性の相関
Project/Area Number |
11217205
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉江 尚子 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 助手 (20224678)
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Keywords | 微生物産生ポリエステル / 生分解性ポリマー / 化学組成分布 / 微細構造 / 結晶相組成 |
Research Abstract |
微生物由来の脂肪族ポリエステル、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は自然界で完全に閉じたサイクルを持つ環境低負荷型プラスチックである。中でも、3-ヒドロキシブタン酸(HB)と他のHAの共重合体では、共重合モノマーの化学構造や化学組織に依存して、硬い熱可塑性樹脂から柔軟性に富んだゴム状物質変化するため、広範囲での応用が期待されている。本研究の目的は、PHA共重合体の構造と物性の相関を系統的に理解することにある。本年度の研究では化学組織分布が単分散性のPHAと二分散性のPHA(=PHBと共重合体のブレンド)の比較に重点をおいた。 70から110℃で結晶化させたPHBとPHB-HV(HBと3-ヒドロキシペンタン酸の共重合体)のブレンドについて、DSCによる融解の観察および固体NMR解析より、PHB-HV共重合体の結晶相と非晶相へ分配を決定した。この温度範囲では、結晶化温度の上昇とともにPHBとPHB-HVの結晶化速度の比が大きくなるが、PHB-HVのHV組成が13%以下のブレンドでは、結晶化温度によらず、PHBとPHB-HV成分が等しい割合で結晶相に取り込まれることがわかった。一方、15%以上ではPHB優先結晶相の形成や相分離が起きるようになった。 化学組成分布が高次構造に与える影響を調べるため、共重合体とブレンド試料について、小角X線散乱測定より結晶ラメラと非晶相の厚みを、固体NMR法により結晶相中のHV組成を決定した。共重合体、ブレンド試料ともに、平均HV組成が10%以下のときには全HVユニットの約60%が結晶相に取り込まれることが分かった。また、この組成範囲ではラメラ厚みのHV組成依存性も共重合体とブレンドで区別が付かない。一方、平均HV組成が約10%以上のPHB-HV共重合体では結晶中のHVの割合が上昇し、ラメラの厚みが増大する。これは過冷却が小さくなることによると考えられる。
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