2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11222202
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
金崎 順一 大阪市立大学, 工学部, 助教授 (80204535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷村 克己 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (00135328)
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Keywords | 半導体表面 / 原子操作 / 光誘起構造変化 / 光誘起脱離 / 電子過程 / トンネル顕微鏡 / シリコン / インジウムリン |
Research Abstract |
レーザー光を用いた半導体表面における原子・分子操作制御の基礎的知見の獲得を目的として、表面で発生する光誘起構造化の効率・形態的特徴をトンネル顕微鏡で直接観察するとともに、フェムト秒非共鳴イオン化分光法を用いて、構造変化に伴う脱離種の収量や速度分布等を測定した。これら構造変化及び脱離の特徴を、表面基礎物性及び励起条件という観点より体系化する事により光誘起原子過程の解明を進めている。今年度の研究により得られた知見を以下にまとめる。 1)擬1次元的な構造的・電子的性質を示すInP(110)及びSi(111)-(2xl)表面では、表面状態間の光学遷移により特定方位(表面電子構造が強い分散を示す方位)に選択的に伸びたvacancy stringが発生する。 2)InP(110)表面に、バルク励起のみがおこる波長の光で励起したところ、表面励起の場合と比較して(1)vacancy生成効率が低い事、(2)2次元的に広がったvacancy clusterの生成が顕著である事を明らかにした。 3)vacancy生成効率はn-type試料のほうがp-type試料に比べて数倍高い。 1)-2)の結果は、表面電子励起状態の発生が効率的結合切断に関与している事を示すとともに、誘起される構造変化の効率及び形態と光学遷移により発生する電子励起状態の性質とに強い相関があることを示唆している。さらに、3)の結果は、表面近傍のバンドベンディングの違いにより、表面電子励起状態と結晶内部の電子系との相互作用が異なる事により説明する事が出来る。 さらに、上記知見をレーザー光による表面原子操作に積極的に応用し、新しい表面構造相の創製に関する研究を開始した。Si(001)-(2x1)表面に、表面光学遷移エネルギーに近い532nmのレーザー光を繰り返し照射し、表面構造の変化をSTM観察した。その結果、1.0x10^7W/cm^2以下の励起強度において、照射前とは明らかに異なる構造を示す表面相が出現する事を明らかにした。同程度の励起強度により、電子的過程によるSi原子脱離が生じている事から、この新表面構造相の生成には、最外層ダイマーにおける電子的結合切断が関与しているものと考えられる。今後は、Si(001)-(2x1)表面における光誘起構造変化の機構を解明し、この新表面構造相を発生させる励起条件を最適化するとともに、新しい表面相の物性評価が重要と考えられる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] N.Itoh: "Laser-Induced Desorption from STM-Selected Semiconductor Sites"Progress in Surface Science. 61・1. 1-19 (1999)
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[Publications] 金崎順一: "半導体表面構造の光誘起変化と構成原子の脱離"固体物理. 34巻・8号. 657-668 (1999)
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[Publications] K.Tanimura: "Laser-Induced Electronic Bond Breaking and Structural Changes on Semiconductor Surfaces"Society of Photo-Optical Instrumentation Engineers (SPIE). 3618. 26-36 (1999)
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[Publications] K.Tanimura: "Laser-Induced Electronic Instability on Semiconductor Surfaces of Si(111)(7x7) and InP(110)(1x1)"Proceedings of the 25th International Conference on Physics of Semiconductors. (印刷中). (2001)
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[Publications] J.Kanasaki: "Laser-Induced Electronic Desorption from InP (110) Surfaces Studied by Femtosecond Non-Resonant Ionization Spectroscopy"Physical Review B. (印刷中). (2001)