Research Abstract |
昨年度までに,真空蒸着法を応用してマグネシウム合金の表面に純度の高いマグネシウム皮膜を形成する研究を行ってきた.本年度は,蒸着被覆後,熱間プレスまたはHIP処理を施して,基板と蒸着膜との界面の密着性を向上させることを試みた.その結果,673K,7MPaで7.2ksの熱間プレスを施すと,界面と基板の見分けが困難となり,90°曲げ試験で密着性を評価した結果,皮膜にクラックが導入されるが,界面の剥離はまったく観察されず,著しく密着性が向上した.また,673Kよりも低い523Kでも,加圧力,100MPa,加圧時間7.2ksで界面の欠陥がなくなり,曲げ試験の結果,密着性が向上することが明らかとなった.さらに,673K,100MPa,7.2ksのHIP処理によっても同様な結果が得られた. これら密着性を向上させた試料について,3%NaCl水溶液を用いた浸漬試験の結果,蒸着のままの試料よりも耐食性が向上することが明らかとなった.熱間プレスあるいはHIP処理により,蒸着膜中のボイドおよび基板に達するピットなどの欠陥が減少したことによると考えられる. 同じ特定領域研究の他のグループである「固体リサイクルグループ」に蒸着被覆試料を提供し,熱間押出しを行った結果,無蒸着試料と同様な機械的特性を示すことが明らかとなり,本手法によれば,マグネシウム合金の優れたリサイクル性を損なうことなく,耐食性を向上できることが示された. 一方,本研究における腐食生成物の解析から派生した「人工腐食・酸化処理」の研究においては,10%NaCl+10%NaOH水溶液にマグネシウム合金を浸漬して水酸化マグネシウム皮膜を生成させた後,大気中673Kで加熱するという,比較的単純な手法で耐食性が向上することが明らかとなった.蒸着被覆法と組み合わせてさらなる耐食性向上が図れることが示された.
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