2000 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトの概日リズム障害を伴う疾患における生体時計関連遺伝子の解析及び治療法の開発
Project/Area Number |
11233206
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
海老沢 尚 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (00201369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 正明 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (80232198)
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Keywords | 概日リズム障害 / 生体時計関連遺伝子 / 遺伝子変異 / period遺伝子 / BMAL2遺伝子 / Clock遺伝子 |
Research Abstract |
我々は、非24時間睡眠覚醒症候群(N-24)、睡眠相後退症候群(DSPS)などの概日リズム障害を対象に全生体時計関連遺伝子の多型解析を行っている。今年度はPer3,Clock,BMAL1遺伝子について解析を行った。被験者の静脈血から抽出したゲノムDNAを用いて、PCR-SSCP法、PCR-RFLP法、PCR産物の直接シーケンス法を用いてPer3遺伝子の全21エクソンについて調べたところ、アミノ酸置換を伴う多型を複数見いだし、その組み合わせによってPer3遺伝子は4つのハプロタイプを形成することが判明した。うち一つは正常被験者に比べ、DSPSで有意に多く認められ(P=0.037,Odds ratio=7.79)、疾患発症の危険因子になっていることが示された。Clock遺伝子についても全エクソンを調べ、アミノ酸置換を伴うもの1個を含む2個の多型を新規に見いだした。BMAL1遺伝子についても解析中である。 また、時計遺伝子BMAL1に相同な遺伝子をヒト遺伝子のデータベース上で検索したところ、相同性のある遺伝子断片を見いだした。その配列を元にPCR法などを用いて全長のcDNAを単離し、BMAL2と命名した。BMAL2遺伝子は肝臓のほか、ヒト胎児脳に多く発現し、第12番目の染色体上にあった。上記概日リズム障害を対象に、BMAL2遺伝子についても多型解析を行っている。 既にClock遺伝子の3'非翻訳領域の多型と睡眠パターンの朝型・夜型との間に相関がみられること、hPer2遺伝子の変異が概日リズム障害の一種である睡眠相前進症候群の原因になっていることが示されている。我々は今後も他の時計遺伝子の多型解析を進め、時計遺伝子の多型の組み合わせがヒトの概日リズムの病的・生理的個体差に及ぼす影響を探る。
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[Publications] Takashi Ebisawa et al.: "Association of structural nolymorphisms in the human period3 gene with delayed sleep phase syndrome."EMBO Reports. (In press). (2001)
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[Publications] Masaaki Ikeda,Wangjie Yu,Momoki Hirai,Takashi Ebisawa et al.: "cDNA cloning of a novel bHLH-PAS transcription factor superfamily gene, BMAL2 : Its mRNA expression, subcellular distribution, and chromosomal locallzation."Biochem.Biophys.Res.Commun.. 275. 493-502 (2000)
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[Publications] 海老澤尚: "睡眠覚醒リズム障害と時計遺伝子"神経研究の進歩. 44・6. 891-897 (2000)
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[Publications] 海老沢尚: "生体時計の分子機構-ストレスへの時間生物学的アプローチに向けて-"日本神経精神薬理学雑誌. 20. 107-111 (2000)
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[Publications] 海老沢尚: "家族性致死性不眠症"Clinical Neuroscience. 18・10. 94-95 (2000)
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[Publications] 海老沢尚: "生体リズム障害の分子生物学"臨床脳波. 42・10. 629-633 (2000)
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[Publications] 海老澤尚: "睡眠覚醒リズム障害と遺伝子変異"自律神経. 37・2. 158-162 (2000)
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[Publications] 海老澤尚: "概日リズム障害と遺伝子変異"脳と精神の医学. 11・1. 1-7 (2000)
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[Publications] 山内俊雄,海老澤尚: "生物学的精神医学研究の限界と将来"精神医学. 42・3. 263-271 (2000)