2002 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトの概日リズム障害を伴う疾患における生体時計関連遺伝子の解析及び治療法の開発
Project/Area Number |
11233206
|
Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
海老澤 尚 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (00201369)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 正明 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (80232198)
|
Keywords | 概日リズム睡眠障害 / 時計遺伝子 / 遺伝子多型 / リン酸化 / メラトニン受容体 / G蛋白 / カゼインキナーゼ / プロモーター |
Research Abstract |
前年度までに睡眠相後退症候群、非24時間睡眠覚醒症候群の発症に関与する時計遺伝子の多型としてPer3遺伝子のH4ハプロタイプ、Clock遺伝子のT3111C多型を報告済だが、今年度はハムスターのリズム変異体tauの原因遺伝子であり、PER蛋白などの時計蛋白をリン酸化するCasein Kinase I epsilon (CK I ε)遺伝子の多型解析を行い、4個の多型を見出した。うち1個がアミノ酸の変化を伴う多型(ミスセンス多型)だった。ミスセンス多型は正常被験者の約20%が保有していたが、概日リズム障害での保有率は約10%と、有意に低頻度だった(P=0.013)。このミスセンス多型を導入したCK I ε cDNA及び野生型のCK I ε cDNAを発現ベクターに挿入し、大腸菌で蛋白を発現させ、精製してcaseinを基質に酵素活性を調べたところ、ミスセンス多型を持つ酵素の方が約1.8倍高い酵素活性を示した。従ってこのミスセンス多型はCK I εの酵素活性を変化させ、概日リズム障害の発症リスクを抑制する働きを持つと考えられた。(CK I εの酵素活性の解析には大阪大学蛋白質研究所の高野・礒島両氏の協力を得た) また、以前見出したメラトニン1A受容体のR54W変異が受容体と各G蛋白との結合に及ぼす影響を、G蛋白のキメラ遺伝子を用いて調べた。G蛋白のキメラ遺伝子は慶応大学西本教授から提供を受けた。その結果、R54W変異を持つ1A受容体は、持たないものに比べてGi1/2,Gi3との結合は強化され、Gq/11等との結合が減弱しているのが見出された。このG蛋白との結合性の変化がヒトの概日リズムに影響を与える要因と思われた。 また、時計遺伝子の一つBmal1のプロモーター領域にあるROR-RE配列の機能を解析し、RORα、RORβ、RORγにより転写が促進され、REV-ERBでは変化がないことを見出した。
|
-
[Publications] Kohtoku Satoh, Kazuo Mishima, Yuichi Inoue, Takashi Ebisawa, Tetsuo Shimizu: "Two pedigrees of familial advanced sleep phase syndrome in Japan"Sleep. (印刷中). (2003)
-
[Publications] 海老澤 尚: "概日リズムと睡眠障害-時計遺伝子からみた睡眠障害"医学のあゆみ. 204(11). 799-802 (2003)
-
[Publications] 海老澤 尚: "体内時計機構の分子医学"Molecular Medicine. 40(3). 318-325 (2003)
-
[Publications] 海老澤 尚: "時計遺伝子の発見と時間生物学"精神科. 1(5). 382-387 (2002)
-
[Publications] 海老澤 尚: "時計遺伝子と睡眠覚醒障害"脳と精神の医学. 13(3). 289-295 (2002)
-
[Publications] 海老澤 尚: "概日リズム障害の遺伝子解析"内分泌・糖尿病科. 14(4). 408-413 (2002)
-
[Publications] 海老澤 尚: "生体リズム障害の分子生物学的背景"Prog.Med.. 22. 1385-1389 (2002)
-
[Publications] 海老澤 尚: "メラトニン受容体および時計遺伝子多型と概日リズム障害"現代医療. 34. 63-67 (2002)
-
[Publications] 海老澤 尚 (分担執筆): "「KEYWORD」樋口輝彦、神庭重信、染谷俊幸、宮岡等編集"先端医学社. 252 (2003)
-
[Publications] 池田正明 (分担執筆): "「KEYWORD」樋口輝彦、神庭重信、染谷俊幸、宮岡等編集"先端医学社. 252 (2003)