2000 Fiscal Year Annual Research Report
細胞間接触により誘導され、上皮極性を変化させるシグナル伝達機構
Project/Area Number |
11235202
|
Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
林 茂生 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 教授 (60183092)
|
Keywords | ショウジョウバエ / 気管 / 形態形成 / 細胞運動 / ゲノム解析 / GFP |
Research Abstract |
1 Winglessによる気管形態の制御機構の解明 Wntファミリーのリガンドは脊椎動物の肺胞形成の際に強く発現するがその機能は不明である。ショウジョウバエの気管発生においてWinglessは気管原基に隣接した外胚葉において発現し、袋状の気管原基が管状化する過程に必須である。我々はWgシグナルが気管のdorsal trunkにおいてDelta、Escargotそしてspaltをそれぞれ異なる仕組みで制御することにより管のかたち、太さ、進展の方向を制御することを示した。この結果はWinglessが組織のかたちを決める仕組みをよく説明する。 2 ショウジョウバエ発生に関わる新規遺伝子機能同定のための突然変異バンクの整備 気管の形態形成に関わる遺伝子機能を全ゲノムを対象にして網羅的に検索するためには、塩基配列レベルで変異点が同定された突然変異のバンクが有用である。我々は日本のショウジョウバエ研究者の集まりであるNPコンソーシアムによって作成された4500のGal4トランスポゾン挿入変異株を収集し、その変異点を決定している。すでに2000を越える株の変異部位を決定し、染色体地図上にマップして遺伝子との対応関係を決めて、データベース化をすすめている。これだけの規模のGal4系統の整備は世界でも類を見ない。 3 生体内での形態形成ダイナミクス解析に向けたGFP発現系統の確立 形態形成は細胞の微細構造が動的に変化する過程であるが、固定した標本の観察のみではそのダイナミクスを可視化するのには十分でない。我々は固定することなく細胞の形態を観察すべく各種のGFP融合タンパク質を気管細胞で発現させた。その結果、膜結合型GFPを利用することで気管細胞が多数の微細な突起をのばして標的を探索している様子を示すことに成功した。これでtime lapse観察を行う準備が整った。
|
-
[Publications] Kazumasa K.: "EGF receptor attenuates Dpp signaling and helps to distinguish the wing and leg cell fates in Drosophila"Development. 127. 3769-3776 (2000)
-
[Publications] Chihara T.: "Control of tracheal tubulogenesis by Wingless signaling"Development. 127. 4433-4442 (2000)
-
[Publications] 林茂生: "細胞工学"Cdk1によるS期抑制ショウジョウバエゲノムの倍化を抑制するメカニズム. 7 (2000)