2000 Fiscal Year Annual Research Report
ケモカインSDF-1/PBSFの造血、血管形成における作用機構に関する研究
Project/Area Number |
11235204
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Research Institution | Research Institute, Osaka Medical Center for Maternal and Child Health |
Principal Investigator |
長澤 丘司 大阪府立母子保健総合医療センター研究所, 免疫部門, 研究員 (80281690)
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Keywords | ケモカイン / 骨髄 / Bリンパ球 / 造血 / ホーミング / 血管形成 |
Research Abstract |
造血や血管形成において、細胞分化に伴う臓器内での前駆細胞の移動、定着の分子機構は明らかでない。我々は、これまでに炎症性サイトカインとして知られていたケモカインファミリーの1つSDF-1/PBSFとその受容体CXCR4を同定し、これらの分子が、胎児の生存、Bリンパ球の生成、骨髄での骨髄球系造血、心室中隔形成、胃腸管を栄養する大型の血管の形成に必須であることを発見した。SDF-1/PBSFは走化性因子のファミリーに属し、発生おける作用には臓器特異性があるため、細胞分化に伴う血液細胞や血管内皮細胞の、臓器内での移動、定着を制御している可能性がある。そこで我々はSDF-1/PBSFの作用機構を明らかにするため、分化の指標の解析が進んでおり、細胞分化の研究に最も適した系の1つであるBリンパ球の発生においてSDF-1/PBSFがどの分化段階で作用しているかの解析を試みた。Bリンパ球の発生は、分化が決定した直後の前駆細胞(早期プロB細胞)の生成から始まり、抗体遺伝子重鎖が再構成された後期プロB細胞へと進む。これまで後プロB細胞の生成にはIL-7が必須であることが明らかとなっているが、分化決定とより密接に関係する早期プロB細胞の生成を支持するサイトカインは明らかでなかった。我々は、胎児胸腺培養によるアッセイ系を用いて、胎生期の中心的な造血臓器である胎児肝において、これまでで最も初期のB前駆細胞を同定し、SDF-1/PBSF欠損マウスではこのB前駆細胞の生成が著明に障害されているが、胎児肝に存在するT前駆細胞や、多くの血球系列に分化能をもつ多分化能前駆細胞は正常マウスと同様に生成されることを明らかにした。これにより、Bリンパ球生成において、分化決定直後に造血臓器の微小環境依存性となる分子基盤を担うサイトカインがはじめて明らかとなったと共にSDF-1/PBSFが作用する分化段階が同定された。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] T.Nagasawa: "A Chemokine, SDF-1/PBSF, and Its Receptor, CXC Chemokine Receptor 4, as Mediators of Hematopoiesis."International Journal of Hematology. 72. 408-411 (2000)