2003 Fiscal Year Annual Research Report
細胞核移植法による新規生物機能を有するメダカ系統の作製
Project/Area Number |
11236207
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
若松 佑子 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 教授 (20026800)
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Keywords | 核移植 / 培養細胞 / 体細胞 / 魚類 / メダカ |
Research Abstract |
本領域は生物種の多様化の機構をゲノムの構成とその変遷との関わりにおいて解明することを目的としている。これらの研究のためには、遺伝子の改変によって新規生物機能を有する動物の作製手法の開発が必須である。このような手法の一つとして、本研究ではメダカを用いた細胞核移植の方法を開発することを目的として、成魚の尾鰭や6日胚由来の培養細胞や1日胚(2体節期)由来の体細胞の核を用いた核移植クローンの作製を試みた。 まず、培養細胞の核を用いた核移植を行った。除核卵への移植では初期嚢胚期以後にまで発生する個体は得られなかった。非除核卵への移植では移植個体は最も良い場合で孵化後3週間まで生存したが、成魚まで成育したものはなかった。これらの核移植個体では染色体数がN、2N、3Nのモザイクになっていることが明らかになった。この染色体異常は卵核と移植核の細胞周期の不調和に起因すると考えられた。 次にドナーに1日胚(2体節期)の細胞核を用い、1688個の非除核卵へ移植したところ、6個体(0.4%)が孵化し、3個体(0.2%)が性成熟した。このうち2個体は3Nで不妊であったが、1個体はドナー核由来の2Nであり、妊性を有することがわかった。現在、子孫を育成して遺伝学的解析を行っている。同様の結果は胞胚期細胞核を用いた移植実験でも得られている(論文準備中)が、2体節期にまで発生した細胞核から妊性を有する2N個体が得られたのはこれが始めてである。なお、除核したレシピエントを用いた実験ではこれまでのところ、初期嚢胚期以後にまで発生する個体は得られていない。 これらの研究結果は胚由来の体細胞核が生殖能力をもった2倍体の個体を作り出す能力を有することを示すものである。また、今後の研究の進展によって体細胞クローン作製への道が開けるものと期待される。
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[Publications] Ju, B.: "Development and gene expression of nuclear transplants generated by transplantation of cultured cell nuclei into nonenucleated eggs in medaka, Oryzias latipes."Dev.Growth Dif.. 45(2). 167-174 (2003)
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[Publications] Iwamatsu, T.: "Normal growth of the "see-through" medaka."Zool.Sci.. 20(5). 607-615 (2003)
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[Publications] Kinoshita, M.: "A transgene and its expression profile are stably transmitted to offspring in transgenic medaka generated by the particle gun method."Zool.Sci.. 20(7). 869-875 (2003)