2001 Fiscal Year Annual Research Report
膜タンパク質の1分子レベルでのイメージング,ナノマニピュレーション
Project/Area Number |
11242201
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石島 秋彦 名古屋大学, 工学研究科, 助教授 (80301216)
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Keywords | バクテリア / べん毛 / 1分子計測 / 阻害剤 / 位相差顕微鏡 / 膜電位 / フォトダイオード / トルク |
Research Abstract |
バクテリアは菌体表面に生えるらせん状のべん毛繊維をスクリューのように回転させることにより,推進力を得て溶液中を遊泳する.バクテリアの細胞膜にはべん毛を回転させる役割を持つモータータンパク質が埋め込まれており,バクテリアはそこから細胞質内に流入するイオンのエネルギーからモーターの回転力(トルク)を作っている. べん毛モーターは現在,H^+駆動型とNa^+駆動型が知られている.H^+駆動型モーターの研究が先行しているが,H^+イオンは水の中で一般的に存在し,モーター部以外にも様々な影響を与えるため,イオンの流れにともなうエネルギー変換の解析は難しく,制限されている.これに対し,Na^+駆動型モーターはイオン勾配を自在に変化させることができ,さらにH^+駆動型モーターにはない回転の特異的阻害剤を用いることができるなど,モーターの機能解析にはよい材料であるといえる.我々は,このNa^+駆動型の菌体を用いて入力であるNa^+の濃度(流入量)を様々に変化させ,またべん毛にかかる負荷を変化させ,出力であるモーターの回転数を計測している. 計測は,カバーガラス上に付着させた菌体を位相差顕微鏡で観察し,回転するビーズの像を4分割フォトダイオードに投影する.ダイオードから得られる出力波形の周波数より回転速度,振幅より回転半径を求める.これらの値はトルクを見積もる時に必要となる.Na^+濃度に対する回転速度を計測した結果,べん毛モーターの回転速度はNa^+濃度の増加にともない速くなりNa^+濃度がおよそ50mMに達した時,最高速度に達し飽和状態となった.これは遊泳速度の傾向と一致する.また,異なる大きさのビーズを結合させることにより求めた回転速度と回転半径の実験結果を用いて,べん毛モーターにかかる負荷を変化させた時のトルクを求めた.その結果,Na^+駆動型べん毛モーターのトルク特性として粘性抵抗の上昇のともないトルクは増加し,あるところで一定となる.この結果はNa^+駆動型べん毛モーターがトルク可変型モーターであることを示している.つまり,このモーターは周りの環境に応じてトルクを変化させるメカニズムを持っている可能性を示唆している.
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Y.Ishii, A.Ishijima, T.Yanagida: "Single molecule nanomanipulation of biomolecules"TREMDS in Biotechnology. Vol.19, No.6. 211-216 (2001)
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[Publications] Kazuo Kitamura, Akihiko Ishijima, Makio Tokunaga, Toshio Yanagida: "Single-Molecule Nanobiotechnology"JSAP International. No.4. 4-9 (2001)
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[Publications] Akihiko Ishijima, Toshio Yagagida: "Single molecule nanobioscience"Trends in Biochemical Sciences. Volume26, Issue7. 438-444 (2001)
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[Publications] Y.Ishii, A.Ishijima, T.Yanagida: "Coupling between chemical and mechanical events and conformation of single protein molecules"Results and Problems in Cell Differentiation. Vol.36. 87-105 (2002)
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[Publications] 617-620 (2002)
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[Publications] 石島秋彦: "マイクロマシン(生体リニアモータ-, 回転モーターの運動メカニズム)"(株)産業技術サービスセンター. 669 (2002)