1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11301016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平野 嘉彦 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50079109)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重藤 実 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (80126078)
松浦 純 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (70107522)
浅井 健二郎 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (30092117)
富重 純子 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (40313184)
HALLENSLEBEN Markus 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 外国人教師 (70313187)
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Keywords | 身体 / メディア / 超越者 / テクストの多層性 / 都市 / 舞踏 / 翻訳 / 空間体験 |
Research Abstract |
本研究は、ドイツ文学研究の立場から身体概念の深化に貢献するとともに、身体論的視座からドイツ文学史の再評価を図ることを目的として始められた。4年間の研究の初年にあたる本年度は、3回の研究会を開催した。参加者は、「身体」のテーマとの関連において、それぞれの専門領域の問題を掘り下げた結果を発表し、活発な議論が展開された。本年度の第一の課題である、メディア論と身体論の内的関連の考察として、研究代表者平野は、キルケゴールからカフカに至る、超越者を体感するありようの変化が、メディアの変遷と密接に関わるとする論を提出した。この論を踏まえ、中世から現代に至るまでのドイツ文学を対象に、さまざまな角度からの発表および討論がなされた。主なものとしては、ゲーテやムージルの文学作品に表現された多様な登場人物の身体の交錯によって生み出されるテクストの多層性の検討といった基礎的研究のほか、シュティフター、ヘルマン・ブロッホのテクストにおける書き手・語り手の身体の問題や、身体性と精神性を兼ね備えたメタファーとしての「心」という形象の中世から現代に至るまでの歴史的変遷、といったテーマが集中的に検討された。また、リヒテンベルクのコルセット批判、海水浴推奨、反観相学などにあらわれた身体の解放・解体の試み、フランツ・ヘッセルを中心に見た都市の遊歩者の系譜といった、文化史的観点からのアプローチもなされた。今年度の第二の課題である、身体論と他の問題群との関連を探る試みとしては、舞踏論、言語論、翻訳論、読書行為論、アウラ論、人形論、マゾヒズム論、神秘体験論、空間体験論など、多様な問題圏との接点が指摘され、来年度以降の研究の足がかりとなった。
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Research Products
(25 results)
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[Publications] 浅井健二郎: "Frau・Mode・Hure-Zum, Weibli*len' bei Walter Benjamin"global benjamin, Internationaler Walter Benjamin kongreβ 1992. Bd.3. 1659-1667 (1999)
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[Publications] 浅井健二郎: "ドイツ後期モデルネの思想とゲーテ"新潮. 第96巻第12号. 214-225 (1999)
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[Publications] 浅井健二郎: "大林信治・山中浩司編著『視覚と近代』(名古屋大学出版会)"図書新聞. 第2443号. 3 (1999)
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[Publications] 浅井健二郎: "『ドイツ悲劇の根源』(上・下)-ベンヤミンの思想全体の要"ちくま. 第341号. 16-17 (1999)
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[Publications] 石井正人: "歴史的に見た機能動詞としてのlernen"千葉大学 人文研究. 29号. 1-15 (2000)
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[Publications] Omiya, Kanichiro: "Uber eine andere Art des Gedachtuisses-Jenseits von Sigmund Freud"Beitrage zu den Tateshina-Symposien 1997/1998. (未定). (2000)
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[Publications] 北島玲子: "終りなき省察の行方-F.シュレーゲルの『ルツィンデ』が見たR.ムージルの『特性のない男』"上智大学ドイツ文学論集. 36号(未定). (2000)
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[Publications] 山口庸子: "戦後ドイツのユダヤ文学:ルート・クリューガーの『生きつづける』を手がかりに"週刊百科「世界の文学」第68号〜カブカ・ホフマンスタール『ユダヤの文学世界』. 68号(掲載予定).
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[Publications] Yokitani, Yasuichi: "Auf der Suche nach der "reinen Sprache"-Die Moglichkect der Ubersotzung."甲南大学紀要・文学編. 114号. (2000)
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[Publications] 斧谷 彌守一: "ヘルダーリンの讃歌『ゲルマーニエン』と『ライン』(改題) ヘルダーリンの讃歌『回想』(改題)ヘルダーリンの讃『イスター』(改題)"現代思想 1999年5月臨時増刊・総特集「ハイデガーの思想」. S.312-313 (1999)
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[Publications] 斧谷 彌守一: "ヘルダーリンの讃歌『ゲルマーニエン』と『ライン』(改題) ヘルダーリンの讃歌『回想』(改題)ヘルダーリンの讃『イスター』(改題)"現代思想 1999年5月臨時増刊・総特集「ハイデガーの思想」. S.316-317 (1999)
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[Publications] 斧谷 彌守一: "鍛冶哲郎『ツェラーン-言葉の身ぶりと記憶』(書評)"日本ツェラーン協会「ツェラーン研究」. 1. 110-114 (1999)
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[Publications] 斧谷 彌守一: "光末紀子『書きはじめた女たち-ドイツ・フェミニズム批評の視点から』(書評)"阪神ドイツ文学会編「ドイツ文学論攷」. IV I(未定). (1999)
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[Publications] 吉用宣ニ: "「至上の時」-ペーター・ハントケ論"東北学院大学論集(人間・言語・情報). 第123号. 75-136 (1999)
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[Publications] HALLENSLEBEN, MARKUS: "ENDING AVANTGARDISM : BODO HELL"JOURNAL OF HUMANITIES AND SOCIAL SCIENCES : NAGOYA CITY UNIVERSITY. 1-18 (1999)
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[Publications] HALLENSLEBEN, MARKUS: "THE WORK OF ART IN THE AGE OF DIGITAL REPRODUCTION"VISIBLE LANGUAGE, RHODE ISLAND (USA). 33・2. 154 (1999)
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[Publications] HALLENSLEBEN, MARKUS: "ZWISCHEN TRADITION UND MODERNE・ELSE LASKER-SCHULERS AVANTGARDISTISCHER""ELSE LASKER-SCHULER", Ed. by SONJA HEDCEPETH/ERNST SCHURER, TUBINGEN : FRANCKE. 187-218 (1999)
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[Publications] HIRANO, YOSHIHIKO: "Pannwitz-Boehringer-Hellingrath, Einige Ansatzezu Benjamins Ubersetzungstheone"global benjamin.Hrsg.v.K.Garber u.L.Rehm. 2. 907-917 (1999)
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[Publications] 平野嘉彦: "事典執筆「ハインリヒ ハイネ」「フランツ・カフカ」「エリアス・カネッティ」「パウル・ツェラーン」"沼野充義編『ユダヤ学のすべて』新書館. 194 (1999)
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[Publications] 平野嘉彦: "事典執筆「ハインリヒ ハイネ」「フランツ・カフカ」「エリアス・カネッティ」「パウル・ツェラーン」"沼野充義編『ユダヤ学のすべて』新書館. 198-199 (1999)
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[Publications] 浅井健二郎 (訳): "ヴァルター・ベンヤミン『ドイツ悲劇の根源』(上・下)〔関連論考所収〕"筑摩書房(ちくま学芸文庫). 792頁 (1999)
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[Publications] 石井正人・林睦實・市川明(共訳): "ギュンター・グラス『はてしなき荒野』"大月書店. 942 (1999)
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[Publications] 岩崎 力 (他訳): "プルースト全集 別巻"筑摩書房. 512 (1999)
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[Publications] 富重与志生 (訳): "隔離の風景"同学社. 163 (1999)
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[Publications] HALLENSLEBEN, MARKUS: "TUBINGEN/BASEL : FRANCKE VERLAG"ELSELASKER-SCHURER : AVANTGARDISMUS. 368 (1999)