2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11301016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平野 嘉彦 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50079109)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 啓司 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (60173382)
重藤 実 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (80126078)
浅井 健二郎 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (30092117)
HALLENSLEBEN Markus 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 外国人教師(研究職) (70313187)
富重 純子 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (40313184)
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Keywords | 身体 / メディア / 習慣 / 精神医学 / 狂気 / カオス / 仮想空間 / 舞踏 |
Research Abstract |
本研究は、ドイツ文学研究の立場から身体概念の深化に貢献するとともに、身体論的視座からドイツ文学史の再評価を図ることを目的として始められた。4年間の研究の3年目にあたる本年度も、これまでと同様3回の研究会を開催し、合計21の研究報告を受けて活発な議論が展開された。 本年度の研究の重点はなによりも、身体論とメディア論の交錯を具体例に基づいて考察することにあった。これについては、一方では近代的技術が登場する以前には、習慣(ハビトゥス)を身体化した知性・知性化した身体と捉える系譜があったこと。他方では近代にいたって気球などの飛行手段が生み出されると、重力に逆らって空中を飛行しようとする欲望が生じること、またそれが経験的主体をいわば上空から見下ろす超越論的主体の成立とも通底していることが指摘され、人格統合の近代以前的あり方と近代的あり方の相違が、身体および技術の問題として論議された。 また、18世紀末から19世紀にかけての文学的ディスクールと精神医学のディスクールの絡み合いについて複数の報告を受けた。その中で自然の原理を反応過剰Sthenieと反応過小Asthenieのバランスから説明し、それを人体にも応用したロマン主義医学の見解と、それを換骨奪胎し、最高度の刺激感応を組織することによって計算された狂気と理性的カオスを生み出そうとした初期ロマン主義作家たちの目論見が紹介された。これは主体・客体の二分法を棄却し、身体を汎世界的な刺激を伝搬する媒体(メディウム)として捉える態度を示しているだろう。 さらにインターネットや携帯電話が日常化した今日の、いわゆるサイバースペースにおいて、身体がこの仮想空間への批判的モメントたりうるかどうかについても議論が交わされた。 その他、舞踏論、筆跡学など、身体論にかかわる多様な領域について報告が行われた。
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Research Products
(32 results)
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[Publications] 平野 嘉彦: "遍在する眼差(二) ツェラーンもしくは狂気のフローラ(13)"未来. 415号. 26-30 (2001)
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[Publications] 平野 嘉彦: "遍在する眼差(三) ツェラーンもしくは狂気のフローラ(14)"未来. 416号. 26-31 (2001)
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[Publications] 平野 嘉彦: "根をめぐる想念 ツェラーンもしくは狂気のフローラ(15)"未来. 417号. 28-33 (2001)
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[Publications] 重藤 実: "Tempus, Aspekt und Partizip Prasens in der historischen Entwicklung"Grammatische Kategorien aus sprachhistorischer und typologischer Perspektive: Akten des 29. Linguisten-Seminars (Kyoto). 73-79 (2002)
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[Publications] 大宮 勘一郎: "グラモフォンについて"メディア技術と言語表現(日本独文学会研究叢書). 004(土屋勝彦編). 33-46 (2001)
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[Publications] 大宮 勘一郎: "有事と越境 -ハイデガーのDing/ラカンのDing-"フランス思想哲学研究(日仏哲学会編). 第7号(未定). (2002)
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[Publications] 尾方 一郎: "読むこと、書くこと、語ること-『選ばれし人』の書き手について"一橋学会「一橋論叢」. 126巻3号. 33-47 (2001)
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[Publications] 尾方 一郎: "「JIS漢字問題」を読む[研究ノート]"一橋学会「一橋論叢」. 127巻3号(未定). (2002)
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[Publications] 山口 庸子: "Gedicht als Schrift und Gedicht als Speise:Kommunikationsbilder bei Paul Celan und Robert Schindel"Trans および オーストリア文学. 7号. 18-27 (2001)
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[Publications] 富重 純子: "真実と戯れ -ヨーゼフ・ロートの『反キリスト』-"オーストリア文学. 18. 18-26 (2002)
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[Publications] 藤井 啓司: "Literatur als Medium der Erinnerung. Martin Walser, Christa Wolf, Botho Strauβ"Walter Ruprechter (Hg.):Geisiger Klimawechsel? Zu den kulturpolitischen Debatten der 90er Jahre in Deutschland. 28-37 (2001)
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[Publications] 初見 基: "カイザーパノラマ 上 -二〇〇〇年頃に読む『ベルリン幼年時代』4"みすず. 第485号. 8-17 (2001)
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[Publications] 神尾 達之: "目の〈前の〉メディア"土屋勝彦(編):日本独文学会研究叢書004 メディア技術と言語表現. 004. 3-14 (2001)
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[Publications] 神尾 達之: "拾い子を読む/拾い子に読まれる"早稲田大学教育学部 学術研究(外国語・外国文学編). 50号. 1-14 (2002)
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[Publications] 松村 朋彦: "ピグマリオンの変貌 -人工の身体の名前について-"希 土. 26号. 2-14 (2000)
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[Publications] 松村 朋彦: "読書する恋人たち _-神曲、ヴェルテル、朗読者-"ゲーテ年鑑. 44巻(未定). (2002)
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[Publications] 松村 朋彦: "文学と精神分析 -ゲーテからビューヒナーまで-"希 土. 27号(未定). (2002)
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[Publications] 北島 玲子: "身体性なき身体のユートピア -ムージルにおける身体性の問題(二)-"上智大学文学会 ドイツ文学論集. 38号. 107-130 (2002)
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[Publications] Gabriele Stumpp(訳者: 大宮勘一郎): "読書行為と憩い-18・19世紀のテクストにおける「読むこと」-(原題: Lektuere und Musse・Das Lesen in den Texten des 18. u. 19. Jahrhunderts)"シリーズ 言語態 書物の言語態(宮下、丹治編). 第3巻. 231-252 (2001)
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[Publications] HALLENSLEBEN, Markus: "Heines Romanzero als Zeit-Triptychon"Heine-Jahrbuch. 40. 72-85 (2001)
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[Publications] HALLENSLEBEN, Markus: "Osterteich Ohneland,Robert Schindels Gedichte"Trans (www.inst.at/trans/.). 7. 10 (2001)
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[Publications] HALLENSLEBEN, Markus: "(Anti-) Rhetorik und Irrationale : Interaktionsmuster"Geistiger Kimawechsell? by Walter Ruprechter (ed.) JGG. 15-27 (2001)
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[Publications] HALLENSLEBEN, Markus: "Eva Lindemann 2000 : Uber die Grenze (Review)"German Studies Review. 25・1. 150-152 (2002)
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[Publications] 香田 芳樹: "アンチキリスト・カタリ・托鉢修道士-女性神秘家の見た終末的世界-"人文科学(大東文化大学人文科学研究所編). 第7号(未定). (2002)
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[Publications] 初見 基: "カイザーパノラマ 中 -二〇〇〇年頃に読むベルリン幼年時代5"みすず. 第485号. 8-17 (2001)
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[Publications] 久保 哲司: "ドイツの言語文化"放送大学教育振興会. 200 (2002)
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[Publications] 平野 嘉彦: "隠喩としての光耀アドルノと<ドイツ>の詩人たち"平凡社. (2002)
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[Publications] 平野 嘉彦: "ツェラーンもしくは狂気のフローラ 抒情詩のアレゴレーゼ"未来社. (2002)
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[Publications] 初見 基: "〈戦後文学〉の終わり? -90年代文学のいくつかの特徴-『〈戦後文学〉を越えて-1989年以降のドイツ文学-』(初見基編)"日本独文学会研究叢書. 3-19 (2001)
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[Publications] 今泉 文子: "ノヴァーリスの彼方へ"勁草書房. (2002)
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[Publications] ヴァルター・ベンヤミン(翻訳/解説:浅井 健二郎): "ドイツ・ロマン派における芸術批評の概念(関連諸論考を読む)"筑摩書房(ちくま学芸文庫). 479 (2001)
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[Publications] 平野 嘉彦: "獣たちの伝説 東欧のドイツ語文学地図"みすず書房. 222 (2001)