2001 Fiscal Year Annual Research Report
超流動He膜による気体原子の閉じ込めとその時間反転対称性の破れの検証への応用
Project/Area Number |
11304023
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
薮崎 努 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60026127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊倉 光孝 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30324601)
高橋 義朗 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (40226907)
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Keywords | 気体アルカリ原子 / 光ポンピング / スピン偏極 / 超流動ヘリウム / 永久電気双極子モーメント / エキシマー / レーザー分光 |
Research Abstract |
平成13年度の研究では、まず、前年度までに行なった、液体ヘリウム温度におけるアルカリ気体原子セルを実現させる研究をさらに推し進めた。その結果、ガラスセル表面に超流動ヘリウム膜でコーティングすることにより、弱い連続光で多量の原子を生成することを可能にし、生成された原子の寿命、電子スピンの緩和時間T1とも10秒以上、条件に依っては100秒以上という、極めて長い緩和時間を得ることができた。次に,このような原子系のスピン横緩和時間の情報を得るべく,また、現実のEDM測定の場合を想定して、外部磁気擾乱を減少させるために,磁気シールド装置を製作し,その中で低温気体セルを設置し,光ポンピングの実験を行なった。光により作られたスピン偏極の自由歳差運動を光学的に検出し減衰時間の測定を行なった。その結果,衰時間は、非常に小さな不均一磁場であっても、その不均一性により決定することから,原子スピンがもつ本来の横緩和時間は非常に長いことが明らかになり,将来の原子EDM実験に明るい見通しを得ることができた。低温ヘリウムは中性原子にとって全く新しい環境を与えるもので、原子分子の分野でも大変関心が持たれた。基底状態のアルカリ原子はヘリウム原子とは反発相互作用をし、そのためにスピン緩和時間を長めるという理想的なバッファガスの役割を果たす。しかし、アルカリ原子を第一励起状態に励起すると,周りのヘリウムとは引力相互作用も働き,励起アルカリ原子にヘリウム原子が1個または、複数個付いた分子がつくられる。これら種々の大きさの分子のスペクトルを、振動スペクトルまで分解して観測することに成功し,分光学的にこれらの分子生成のダイナミックスを明らかにすることができた。これらの成果は、平成14年度に開かれる3つの国際会議における招待講演として報告する予定である。
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[Publications] A.Hatakeyama: "Atomic alkali-metal gas cells at liquid helium temperatures : Loading by light-induced atom desorption"Phys.Rev.A. 65-2. 022904-1-022904-9 (2002)
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[Publications] K.Toyoda: "Magnetic resonance imaging of Bose-Einstein condensates"Appl.Phys.B. 74-2. 115-120 (2002)