2000 Fiscal Year Annual Research Report
海洋における生体高分子の溶存・コロイド有機物への移行・変質過程の解明
Project/Area Number |
11304039
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小池 勲夫 東京大学, 海洋研究所, 教授 (30107453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 聡 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (90196816)
田上 英一郎 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 教授 (50133129)
小暮 一啓 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (10161895)
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Keywords | コロイド粒子 / 溶存有機炭素 / 溶存有機窒素 / 珪藻 / 原子力間顕微鏡 / 微細鞭毛虫類 / C / N比 |
Research Abstract |
海洋表層において多様な微細プランクトン群集から生成される生体高分子は生物体から離れるか、あるいは生物の死後、微生物等の代謝や様々な物理化学過程による変質を受けてその生化学的特性を変えていくことによって比較的生物的に安定な有機物に変わっていくと考えられる。本研究ではモデル実験による実験室での解析と海洋現場での分析を通じて有機物の変質機構を、その生化学的性状および凝集化などの変化も含めて解析を行っている。本年度の成果は次の3つに集約される。1)珪藻由来の溶存有機物の特性を、細菌フリーの系を用いて解析し、培養条件でどの位の溶存有機物がどの生育時期に集積するかについて明らかにした。珪藻の場合、対数増殖期に比べて、又細胞がしっかりしている定常期の細胞の方が有意に高い溶存有機物を生成するが、この場合、リン、あるいは窒素の栄養塩律速の違いで、生成してくる溶存有機物のC/Nを変化させると共にさらに細胞内でも細胞全体のC/Nを大きく変化させることで、有機炭素の過剰生産に対応していることが明らかにされた。2)コロイド粒子の除去過程についてもコロイドサイズの蛍光粒子をマーカにして実験室およびフィールドで解析を行い、懸濁粒子に付着した微細鞭毛虫類の捕食のための鞭毛活動がコロイド粒子の懸濁粒子化に懸濁物の多い沿岸域では特に大きく寄与していることが明らかになった。3)原子力間走査顕微鏡を用い、コロイドサイズの粒子の形状および海域によるその性状の違いに関する解析を行った結果、植物プランクトンの多い内湾域では比較的しっかりした形状のコロイド粒子が多いのに対し、沿岸、外洋では、潰れやすい形状のコロイド粒子が相対的に多いことが示された。これはコロイド粒子の生成過程を知る上で有用な情報と考えられる。
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[Publications] NAGATA,T.,H.FUKUDA,R.FUKUDA and I.KOIKE :: "Bacterioplankton distribution and production in deep Pacific waters : Large scale geographic variations and possible coupling with sinking particle fluxes."Limnol.Oceanogr.. 45. 426-435 (2000)
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[Publications] T.HASEGAWA,I.KOIKE,and H.MUKAI: "The fate of food nitrogen in marine copepods."Marine Ecology Progress Series. (in press). (2001)
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[Publications] T.HASEGAWA,I.KOIKE,and H.MUKAI: "Release of dissolved organic nitrogen by planktonic community in Akkeshi Bay."Aquatic Microbial Ecology. (in press). (2001)