Research Abstract |
本研究では,礫床河川の河床付着藻類の一次生産特性に関する現地観測,室内実験,数値計算を実施した. 現地観測では,春期から夏期にかけて,実河川中の瀬と淵に多数の模擬石を設置し,それらを1週間隔で回収し,模擬石に付着する藻類のクロロフィルa量を計測した.また,一次生産活動に影響を与えると思われる,日射量,河川水中の栄養塩濃度および水理量の計測を行った.現地観測の結果,観測対象とした瀬と淵では,日射,栄養塩環境に有意な違いが見られなかったものの,淵に比べて瀬の方が増殖初期の活性が高く一次生産力が大きいことが示された. 室内実験では流れの特性が藻類一次生産に与える影響を抽出するため,以下の実験を実施した.水質や日射量が等しく,水理特性のみが異なっている4本の開水路を作成し,それぞれの水路底面に付着する藻類のクロロフィルa量を計測した.また,水路下流端に設置したネットにより藻類の剥離量を計測した.これらの実験は,平坦な水路床および半球状突起を設置した水路で実施した.実験の結果,付着藻類の一次生産力は流速の大きく,河床面近傍の乱れが大きな水路ほど大きな値を示すことが明らかになった.まだ,各水路において,藻類の種組成が異なっており,流速が大きな水路では,単細胞や群体状の藻類と比較して,糸状態の藻類の優占率が大きいことが明らかになった. 室内実験の結果に基づいて,藻類増殖に関する数値計算モデルを構築した.本モデル中では,水理特性の違いによる藻類膜内部での基質の拡散能の違いが考慮されている.開発されたモデルを用いて,室内実験と同じ条件での藻類増殖シミュレーションを実施した,計算の結果,藻類一次生産力は,基質の拡散能よりも藻類種組成の影響を強く受けることが明らかになった.
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