2000 Fiscal Year Annual Research Report
視床下部走行ニューロンによる行動と代謝の協調的制御に関する研究
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11306020
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤崎 徹 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00012047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 俊佑 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (10313082)
西原 真杉 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (90145673)
森 裕司 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (40157871)
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Keywords | 視床下部腹内側核 / 走行運動 / 走行ニューロン / カイニン酸 / γ-アミノ酪酸 / グルタミン酸受容体 / ラット / シバヤギ |
Research Abstract |
視床下部腹内側核(VMH)は摂食・性行動・攻撃・逃避など個体と種の維持に欠かせない本能行動の統御部位である。これら多様な行動の発現には、動機と関わらない次元で「走行運動」という共通な要素存在しており、その制御機構の解明は、これらの本能行動の一層の理解と、それらを制御する手段を開発してゆくためには欠かせない。我々はラットのVMHに、定型的な走行運動を誘起する走行ニューロンが存在することを発見した。さらに、この走行ニューロンは走行を誘起するのみならず、走行運動を支援する代謝・循環器機能を同時にコマンドする機能を持つことも示されている。このことは、「VMHは自律神経系制御のセンターである」という従来の概念的理解が、神経科学的な実態として解析可能になったことを意味しており、この観点からも走行ニューロンの発見はきわめて大きな意義を有するのである。ラットにおいては走行ニューロンの興奮性はカイニン酸型グルタミン酸受容体を介して上昇し、γ-アミノ酪酸(GABA)受容体を介してシナプス前抑制されることがわかった。そして走行ニューロンを興奮させて走行運動と血糖値の上昇を誘起する方法として、カイニン酸あるいはGABA受容体阻害薬をVMHに直接投与している。しかし、シバヤギにおいてはラットの場合とは異なり、カイニン酸単独あるいはGABA受容体阻害薬を同時にVMHに投与した場合、血糖値上昇などの代謝性変化は両方の場合でみられたが、動物行動解析装置で測定した運動量は投与前よりは有意に増加したが走行運動は確認できなかった。さらに行動の表現にもラットの場合と比較して差が生じている。カイニン酸単独では攻撃行動は現われてはこないが、GABA受容体阻害薬を同時に投与した場合は激しい攻撃行動、さらに多量の飲水行動が現われてくる。このように走行ニューロンの制御機構あるいはその出力機構にはある程度の種差が存在することがわかった。次年度はさらに種差について研究を進める。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Li JY 他: "Induction of short ovulatory cycle in shiba-goats by repeated treatments with prostaglandin F2α"J Reprod Dev,. (in press). (2001)
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[Publications] Suzuki M. 他: "Induction of granulin precursor gene expression by estrogen treatment in neonatal rat hypothalamus"Neurosci Lett. 297. 199-202 (2001)
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[Publications] Kuranaga E. 他: "Progesuterone is a cell death suppressor that downregulates Fas expression In the corpus luteum"FEBS Lett. 466. 279-282 (2000)
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[Publications] Suzuki M. 他: "Suppression of copulatory behavior by infusion of antisense oligodeoxynucleotide of granulin into the hypothalamus of neonatal male rats"Physiol Behav. 68. 707-713 (2000)