2001 Fiscal Year Annual Research Report
ピコ秒熱反射法とイオン照射を用いる固体の熱伝導に対する照射効果の研究
Project/Area Number |
11308018
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長崎 正雅 名古屋大学, 工学研究科, 助教授 (40273289)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重松 宏武 名古屋大学, 工学研究科, 助手 (40281068)
有田 祐二 名古屋大学, 環境量子リサイクル研究センター, 助教授 (50262879)
松井 恒雄 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (90135319)
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Keywords | サーモリフレクタンス法 / 熱伝導 / 熱拡散率 / 照射効果 / 格子欠陥 / パルスレーザー |
Research Abstract |
昨年度に引き続き,測定方法を確立する目的でアルミニウム板,ステンレス鋼板,ニッケル板,アルミニウム蒸着膜,金蒸着膜等の種々の試料について,ピコ秒熱反射法(ピコ秒サーモリフレクタンス法)による熱拡散率の測定を試みた. アルミニウム板については,化学研磨で試料表面を平滑にすることによって,再現性のよいサーモリフレクタンスシグナルが得られるようになった.そこでこのアルミニウム板に,バンデグラフ加速器を用いて2MeVのHe^+イオンを照射した.未照射試料とサーモリフレクタンスシグナルを比較したところ,照射により温度緩和が遅くなる--熱拡散率が小さくなる--傾向があることがわかった.ただし熱拡散率の定量性は不十分であった.理論式の解析により,熱拡散率が大きいことが定量性を悪くしているひとつの原因であることを見いだした. 金蒸着膜については,通常の熱拡散よりはるかに速い温度緩和現象が見られた.これは,金における電子-格子結合因子がアルミニウムよりも2桁近く小さいために,ピコ秒程度の短い時間領域では電子-格子間の熱平衡が成り立たないことによるものと思われる.すなわち,ピコ秒熱反射法で熱拡散率を測定することが可能な金属とそうでない金属があることがわかった. これらの実験を通して,熱伝導に対する照射効果を調べる手段として,ピコ秒熱反射法とイオン照射を組み合わせる方法が持つ有用性ならびに限界を明らかにした.
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