1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11355024
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桑村 仁 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (20234635)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲葉 雄一郎 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (90312975)
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Keywords | 建築鉄骨 / 脆性破壊 / 材料靭性 / 寸法効果 / 延性き裂 |
Research Abstract |
高層建築鉄骨では板厚の大きい鋼材が使用されること、および脆性破壊には寸法効果があることが知られていることから、先ず、板厚を変数とする実大破壊実験を行った。板厚は25mm,40mm,100mmの3段階とした。さらに、建築構造用鋼材の破壊靭性に関する規定の幅が広いことを考え、材料靭性をもう一つの実験変数とした。材料靭性は、0°Cシャルピー吸収エネルギーで35ジュールと150ジュールの2段階とし、前者が現行材料規格の下限値27ジュールに近いものである。実験結果は、従来の破壊力学的知見に基づく予想に反し、板厚の影響は小さく、シャルピー衝撃特性の影響は甚大であった。 このような実験結果は、建築鉄骨がかなり大きな塑性変形の後に脆性破壊を起こすという特徴と深い関係があり、船舶や橋梁が弾性範囲での脆性破壊を対象とすることと根本的に異なっている。つまり、建築鉄骨で起こる脆性破壊は、全断面降伏した後に塑性ひずみが進行し、特に、形状変化部での塑性ひずみが材料の延性を突破してしまうことが破壊の初期条件となる。このようにして生じた延性き裂が、ひずみの進行過程で成長し、それが脆性破壊に転化する。したがって、鉄骨の脆性破壊を支配するのは、応力よりもひずみのほうが支配的となる。塑性ひずみが進行すると、応力拘束状態が比較的小さい板厚で収束してしまうため、板厚の影響が顕在化しないことが今回の研究により明かとなった。一方、材料靭性は、脆性破壊に転化する限界き裂サイズを決定づけるため、脆性破壊までの塑性ひずみ能力に大きな影響を与えると言える。 今後は、延性き裂が脆性破壊に転化する条件を支配する各種要因を特定し、その因果律を明らかにしていく必要がある。
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