2000 Fiscal Year Annual Research Report
「思いやり」の互恵性と日本的自己の生成-暗黙の自己愛着と主観的幸福感を中心に
Project/Area Number |
11410029
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北山 忍 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (20252398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
唐澤 真弓 東京女子大学, 現代文化学部, 助教授 (60255940)
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Keywords | 自己 / 思いやり / 互恵性 / 援助行動 / 自己愛着 / 友人関係 |
Research Abstract |
本年度は、次の2つの目標に関して一定の成果をあげることができた。 1.思いやり的心理傾向と対人的互恵性 まず、申請書にある質問票を、日本語、英語、タガログ語で作成し、それぞれ日本、米国、フィリピンで大学生を対象に実施した。その分析から、思いやりから主観的幸福感にいたるメカニズム(因果的パス)には次の2つがあることが示唆された。第1は、間主観的パスであり、思いやりは、身近な他者からの情緒的サポートを誘発し、それは翻って相互協調性の確証となるため、主観的幸福感が増大するというものである。第2は、主観的パスであり、思いやりが、身近な他者からの情緒的サポートを誘発するまでは同じだが、これが翻って自尊心の高揚を促し、その結果、相互独立性が確認されるため、主観的幸福感が増大するというものである。われわれの予測に一致して、第1のパスは、日本とフィリピンで、第2のバスは米国で優勢であった。特に米国では第1のパスは、中途で「分断」されており、実質的に機能していないことが示唆された。 2.思いやり的心理傾向の集合的構成過程 この点をみるために、思いやりと深く関わる、「他者にあわせる」場面(調節場面)と、それと対照的な「他者に影響を与える」場面(影響場面)の日米文化差を検証した。特に状況のサンプル法を用い、日米の状況で日米の被験者がどのような感情を抱くかを検討したところ、次の2点を確認できた。1)日本の調節場面は対人的結びつきを促しているとする証拠を得た。2)これに対して、アメリカの影響場面は主として自己効力感を促していた。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 北山忍,宮本百合: "文化心理学と洋の東西の巨視的比較."心理学評論. 43. 57-81 (2000)
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[Publications] 内田由紀子,北山忍: "思いやり:尺度の作成と妥当性の確認"心理学研究. (印刷中).
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[Publications] Kitayama,S.,Markus,H.R.,& Kurokawa.M: "Culture, emotion, and well-being : Good feelings in Japan and the United States"Cognition and Emotion.. 14(1). 93-124 (2000)
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[Publications] Kitayama,S.: "Collective Construction of the Self and Social Relations : A Rejoinder and Some Extensions"Child Development. 71. 1143-1146 (2000)
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[Publications] Heine,S.J.,Kitayama,S., et al.: "Divergent Consequences of Success and Failure in Japan and North America"Journal of Personality and Social Psychology.. (in press).
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[Publications] Heine,S.J.,Kitayama,S.,Lehman,D.R.,: "Cultural differences in self-evaluation"Journal of Cross-Cultural.Psychology. (in press).
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[Publications] Kitayama,S.: "Cultural variations in cognition : Implications for aging research, In Stern (ed.), The aging mind : Opportunities in cognitive research"National Academy Press.. 280 (2000)
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[Publications] Uchida,Y.,& Kitayama,S: "Implicit Self-Attachment in Japan : An Examination with an implicit association test In G.Hatano et al.(Eds.), Affective minds"Oxford : Elsevier Science.. 300 (2000)