発達臨床ならびに感性心理学的視点から見る日本の育児文化:親子画の分析を通して

2002 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 11410033
• Research Institution: KYUSHU UNIVERSITY
• Principal Investigator: 北山 修 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (80243856)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 遠藤 利彦 京都大学, 大学院・教育学研究科, 助教授 (90242106) ; 中村 知靖 九州大学, 人間環境学研究院, 助教授 (30251614) ; 三浦 佳世 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (60239176) ; 中村 俊哉 福岡教育大学, 教育学部, 助教授 (80274398) ; 田中 優子 法政大学, 第一教養学部, 教授 (40139390)
• Keywords: 浮世絵 / 母子関係 / 育児文化 / 視線 / 性格特性 / 印象評定 / 身体配置

Research Abstract

絵画の中に配置される複数の人物間の視線のやりとりに対して、私たちは無意識裡に注意を払い、それを基に、それぞれの人物の心的状態や特性を推察する。また人物間の関係性の質やそこで繰り広げられる種々のふるまいについて予測を立てる。そして、この視線に関わる私たちの読みが、絵画自体の印象に大きなバイアスをもたらすことも想定される。しかし、こうした視線の読み取りやそれに基づく絵画に対する印象形成には広範な個人差が存在するかも知れない。そして、そこで問題になるのは、もともといかなる特性を有する個人がいかなる絵画に対していかなる反応を見せるのか、そこに一定の法則性のようなものを見出すことは可能なのかどうかということであろう。今年度、我々が行ったのはこうした問いに関わる実証研究である。実験に先立って、まず、1〜2歳の幼児とその母親らしき女性が登場する多くの浮世絵の中から、母子それぞれの身体の配置、およびそれら二者間の視線方向に基づき、「密着」「身体接触のある共同注意」「身体接触のない共同注意」「対面的相互注視」「平行・支持」「無関係」の6カテゴリに相当する典型的刺激図を各2枚ずつ、計12枚を選択した。そして、それらを大型プロジェクターで提示し、総計143名の大学生に形容詞対20項日を利用して、それぞれに対する印象評定を行わせた。その一方で、一般的性格特性であるBig5への回答も求めた。その結果、印象評定に関して快活性因子と情緒性因子が得られた。また、Big5と印象評定因子との関係を見たところ、そこにランダムではない、一定の関連性を見て取ることができた。浮世絵の快活性因子には個人の調和性と非誠実性の特性が、浮世絵の情緒性因子には個人の情緒不安定性ならびに調和性の特性が密接に関わっていたのである。

Research Products

• [Publications] 北山 修: "精神分析と対象関係論"日本心療内科学会誌. 6(2). 73-76 (2002)
• [Publications] 北山 修: "幻滅の精神分析"九州神経精神医学別冊. 48(1). 1-3 (2002)
• [Publications] Miura., Kayo: "Detection and Impression of the Gaze Direction in Ukiyo-e prints"Proceedings of the 17th Congress of the International Association of Empirical Aesthetics. 17. 403-408 (2002)
• [Publications] Miura, K., Koike, M.: "Judgment, interpretation and impression of gaze direction in an Ukiyo-e picture with ambiguous eye gaze direction"Japanese Psychological Research. 74(印刷中). (2003)
• [Publications] 遠藤 利彦: "「3歳児神話」の陥穽に関する補足的試論・私論"ベビーサイエンス(日本赤ちゃん学会誌). 1. 66-67 (2002)
• [Publications] 遠藤 利彦: "発達早期における情動の役割"教育と医学. 50. 29-37 (2002)
• [Publications] 遠藤 利彦: "感情はどう育つか"児童心理. 774. 117-123 (2002)
• [Publications] 松尾太加志, 中村知靖: "誰も教えてくれなかった因子分析"北大路書房. 182 (2002)