2000 Fiscal Year Annual Research Report
都市におけるエスニシティと法制度:紛争解決の実践的提言に向けて
Project/Area Number |
11410040
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 直哉 北海道大学, 大学院・国際広報メディア研究科, 助教授 (60261228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢口 祐人 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (00271700)
遠藤 乾 北海道大学, 法学部, 助教授 (00281775)
尾崎 一郎 北海道大学, 法学部, 助教授 (00233510)
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Keywords | 異文化コミュニケーション / エスニシティ / 法制度 / 言語政策 / 都市紛争 / 紛争解決 / エスニック・グループ / 異文化間対立 |
Research Abstract |
本年度は、前年度の資料収集・分析・蓄積に引き続き、以下の二点を明らかにすることを目標とし、達成された。 (1)都市における異文化間コミュニケーションの可能性と限界の理論的解明 前年度に得られた知見のうち、エスニック・グループ間の言語(および文化)の相違をめぐる問題に起因する文化運動および政治運動に関わるものついて、3都市の状況を比較しつつ、より詳細な分析を加え、異文化間コミュニケーションの可能性と限界について、理論的解明を加えた。特に、ここでは単なる3都市の状況の比較に終わらせず、文化の表象装置でもあり媒体でもあり言語の差異が不可避的にもたらすコミュニケーション・ギャップという一般的・普遍的な言語理論的問題枠組みを、実態調査で得られた知見との照合によって、精緻化することを目指した。例えば、マイノリティを生徒として抱えた小学校・中学校における、教師、生徒、PTA間の相互交渉などが、具体的な分析対象となった。また、カリフォルニア州やベルギーのように、複数の「公用語」をめぐる賛双方の政治運動のプロセスにおける議論の経緯が重要な示唆を与えている点が解明された。 (2)都市における異文化間対立問題の法的処理の可能性と限界の理論的解明 前年度に得られた知見のうち、エスニック・グループの価値観、規範意識、および法的地位の差異に起因する法運動・法適用・法使用に関わるものをとりあげ、エスニシティ問題の法的処理の限界と可能性について、理論的に探究された。具体的には米国やEUで顕著なように、異文化集団間の唯一の対話装置となっている「国家法システム」の機能とその限界に関する理論的解明が行われた。 内容としては、異なるエスニック・グループに属する行為者間に発生する紛争(例えば交通事故、ヘイト・クライム、教育格差、賃金格差等、待遇格差)の解決のために、国家法システムがどのような機能を提示出来ているか(またいないか)が検証され、それが原理的問題なのか技術的問題にすぎないか法社会学的に考察された。
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