2000 Fiscal Year Annual Research Report
大衆教育時代におけるエリート中等学校の学校文化と人間形成に関する比較研究
Project/Area Number |
11410072
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹内 洋 京都大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (70067677)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 義和 京都大学, 大学院・教育学研究科, 助手 (10324592)
岩井 八郎 京都大学, 大学院・教育学研究科, 助教授 (80184852)
稲垣 恭子 京都大学, 大学院・教育学研究科, 助教授 (40159934)
保田 卓 福岡教育大学, 教育実践総合センター, 講師 (30293848)
山口 健二 岡山大学, 教育学部, 助教授 (90273424)
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Keywords | エリート中等学校 / 大衆教育時代 / 学校文化 / 国際比較 / 教養主義 / 選抜機能 / 養成機能 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、英仏独米日におけるエリート中等学校の歴史的変容と現状に関して、研究分担者がそれぞれ、各国のエリート中等学校生徒の出身背景、学校生活(公式のカリキュラムと日常活動)、卒業後の進路を中心に既存の資料と先行研究の整理をした。その上で、研究成果の検討会を2回行った。 日本に関しては、京都大学1回生を対象とする大規模な質問紙調査を実施して、出身高校を介して現代のエリート中等学校へのアプローチを試みた。現在の生活様式や価値観と出身高校との関連、母校や他校への意識、エリート中等学校内部(例えば「地方の公立伝統校/都市部の私立中高一貫校」)の分化状況などを中心に分析を進めている。さらに過去の旧制中学時代からの「継承」関係を考察するために、昭和30〜40年代、公立伝統校がいわゆる名門校として「復活」し一躍脚光を浴びて間もなく衰退していく過程(「名門校の55年体制」)を明らかにしていく。 ドイツとフランスへの出張では、幾つかの代表的な中等学校を訪問して聴取調査と資料収集にあたるとともに、研究計画について専門家からレビューを受けた。ドイツでは一般にエリートを語ることがタブー視されているだけでなく、高等教育への「受験戦争」が存在しないため、実際にも特定のギムナジウムに人気が偏ることもない。しかし近年は、公立ギムナジウムの大衆化=質的低下にともない私立が見直されたり、全般的な学力低下への危機感を契機に議論が活発になり幾つかのギムナジウムでは実験的な試みが始まるなど、エリート教育をめぐる新しい動きが注目される。他方、フランスにおけるエリート教育=選抜制度の完成度の高さは既によく知られるところであり、特定リセの学校文化というよりは、準備級以上の競争の過程で強化されていく文化的階層差について、ブルデューなどの研究を踏まえた考察が進められている。
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[Publications] 岩井八郎: "標準化された優秀性-アメリカにおける私立エリート中等教育の伝統と変容"京都大学大学院教育学研究科紀要. 47. 100-118 (2001)
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[Publications] 林芳樹: "フランス教育システムとエリート養成-グランド・ゼコル準備級"静岡県立大学国際関係学部紀要. 12(未定). (2001)
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[Publications] テビット・ノッター/竹内洋: "「スポーツ・エリート・ハビトゥス」杉本厚夫 編『体育教育を学ぶ人のために』(第1章)"世界思想社. 332(20) (2001)