2002 Fiscal Year Annual Research Report
ヨーロッパの社民化動向とその国々の教育政策の変容に関する総合的研究
Project/Area Number |
11410076
|
Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
井上 星児 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (70223253)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野田 正利 大阪大学, 人間科学部, 助教授 (60169349)
宮崎 正勝 北海道教育大学, 教育学部・釧路校, 教授 (80241834)
佐藤 学 東京大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (70135424)
GRIEK Lijckle 広島大学, 留学生センター, 講師 (30294606)
小玉 亮子 横浜市立大学, 商学部, 助教授 (50221958)
|
Keywords | 社会民主主義 / ヨーロッパ / EU(欧州連合) / 日本 / 教育政策 / 新自由主義 / フランス / 北欧思潮 |
Research Abstract |
最終年度にあたる第4年度は、過去3年間展開・蓄積してきた当該科研テーマ(ヨーロッパの社会民主主義動向)に係る「歴史的・理論的研究」及び「各国教育分析」の各個別研究活動の最終的な統合・練り上げを図り、研究成果活動報告書及び同文献資料集において集約を行った。その結果として、EU諸国を中心とする西ヨーロッパにおいて1990年代末以降、各国の政党政治レベルでは社民・中道左派政権はたしかに急速に退潮現象を呈しているが、undercurrentsとして関係国市民の精神文化の奥深くで胎動している<新しい社会民主主義的意識;a renewed social democratic consciousness>は、やはり健在・有効とみるべきであり、ヨーロッパのみならず世界のあちこちで、一部には大きな影響力を有する理論・実践運動として知的市民層の間に広がりつつある状況を集団討議で確認した。 4年前にスタートした時の当該科研メンバーに確認・共有されていたヨーロッパ社民政権拡大気運のpositiveな潜在的意義(21世紀グローバル世界が直面している<エコノミーとエコロジーの両立>という普遍的課題への対処志向)は、その後の国際政治の動向、とりわけ9・11事件以後の国際テロ戦争と現下のイラク戦争に表徴される世界の苛烈な「危機社会」化のなかで、学間テーマとしての有効性をわれわれ自身がじっさい時的には見失いがちになったほどであるが、しかし、近年の内外の豊富な理論開発(例;仏のRocardism、英のGiddens:"The Third Way and its Critics"言説、米のシカゴ大学"Delibemtive Democracy"研究グループの成果、日本の柄谷行人のTrans-critique理論やNAM実践運動、塩野谷祐一の『経済と倫理一福祉国家の哲学』等々)により多角的な文明論的議論・考察を進めていく過程でその間題意識のいっそうの重要性が学際的な共同研究の結果として明らかにできたことが、この科研の大きな成果である。そして、それは外部のreviewersから得られた当該科研への評価(訪問したヘルシンキ大学H.ミッケリ教授、オスロ大学A.フェレスダル教授ら)の中にも見出されたことであった。ちなみに、最終年度現地調査としてこの両国を訪問したのは、北欧圏におけるEU加盟国、非加盟国の両立場からのEUの動向と課題、その中での社会民主主義政権の消長と歴史的意義、緊迫するグローバライズド・ワールドにおける大ヨーロッパの役割等に関し意見を交換する必要が、本科研の論議のなかで確認されたからである。 なお、以上の各研究成果の一部は、研究代表者および研究分担者によって、学会・専門誌等で逐次発表されている。
|
Research Products
(10 results)
-
[Publications] 井上 星児: "グローバルな<危機社会>のもとで、国際理解教育はいかにして可能か"日本グローバル教育学会 グローバル教育 誌. Vol.5. 2-20 (2003)
-
[Publications] Seiji Inoue: "Cultural and Political Rights in a Globalising World -an Asia-Pacific Perspective. Is the UN Declaration of Human Rights Eurocentric"The Eighth Asia-Pacific Conference on Education and Culture. Vol.8(forthcoming). 20-25 (2003)
-
[Publications] 沖 清豪: "父母に開かれた学級経営?イギリスの事例を参考に?"教育展望(教育調査研究所). 37巻3号. 6-18 (2001)
-
[Publications] 小玉亮子: "ワイマール期における家族間題の展開-ドイツ子だくさん家族全国連盟の成立とその背景か"横浜市立大学紀要社会科学系列. 第5号. 53-73 (2002)
-
[Publications] Manabu SATO: "Practical Discourse and Political Agenda of School Reform: Active Progress in Action Research"Educacion Publica ( Secretaria de Educacion y Normal Direccion General de Investigacion Educativa, Mexico D.F. Mexico). 1-11 (2002)
-
[Publications] 野原 光: "暗黙の認臓枠組みと調査で特定される事実-生産システムとその存続の社会的条件という枠組み設定を事例として-"日本労働社会学会年報. 12号. 113-124 (2001)
-
[Publications] 沖 清豪: "イギリス教育行政におけるNPMとしての学校評価制度の展開と課題"学校評価の促進条件に関する開発的研究/木岡一明研究代表(科研報告書). 183-189 (2002)
-
[Publications] 野原 光: "共著『自己選択と共同性-20世紀の労働と福祉』(「リフレクテイブ・プロダクション・システム:構想と実行の体系的再統合」を執筆)"御茶の水書房(社会政策学会年報第5号). 137-153 (2001)
-
[Publications] 小玉亮子: "共著・宮澤康人編 教育文化論-発達の環境と教育関係-(「教育とジェンダー」の章を執筆)"放送大学教育振興会. 197-207 (2002)
-
[Publications] 沖 清豪: "共著『教育制度学研究』(イギリスにおける学校の外部評価-視学制度の現状と課題-の章を執筆)"日本教育制度学会. 94-97 (2001)