2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11410126
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
杉田 弘子 武蔵大学, 人文学部, 教授 (10120859)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重藤 実 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (80126078)
踊 共二 武蔵大学, 人文学部, 教授 (20201999)
新田 春夫 武蔵大学, 人文学部, 教授 (00012443)
川中子 義勝 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60145274)
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Keywords | 社会言語学 / ドイツの言語と社会 / ニーチェの言語思想 / 言語規範意識 / ルターのドイツ語 / 宗教改革運動の言語 / ナチズム運動の言語 / ハーマン、ヘルダーの言語思想 |
Research Abstract |
最終年度である今年度は各自が担当する問題設定をまとめ、言語と社会の関わりの諸相を具体的な事例にもとづいて明らかにするよう努めた: 1.ニーチェは、言語表現に深い喜びを感じる哲学者であったが、他方徹底的な言語不信を抱いていた。この矛盾する二つの要素をふまえ、『ツアラトウストラ』を分析した。また、ニーチェの激烈なキリスト教批判の背後にある古代ローマ人への絶大な評価をとりあげ、その高い文化を破壊した弱者の宗教、キリスト教との対立の構図を明らかにした。 2.近世以降、文書によるコミュニケーションが杜会的に重要な役割を果たすようになったことによって、ドイツ語は話し言葉的性格から書き言葉的性格への傾向を強めたと考えられる。このテーゼをルターの著作を分析することによって明らかにすることを試みた。 3.宗教改革後、宗派戦争の時代のドイツ語圏における大衆向け活版印刷物とくに「ブロードシート」や「新聞」の内容を分析した。その結果、この時代には通説に言うような戦闘的なプロパガンダの性格をもった印刷物のほかに、同時代の思想家たちの諸宗派和解論や非戦論、中立論などの影響を受けた大衆メディアも確実に成長していたことが史料的に明らかにできた。 4.初期新高ドイツ語を中心に現在分詞の用例を分析し、動詞領域におけるドイツ語の歴史的変化の諸特徴を明らかにし、現代ドイツ語との機能的な点での比較考察をおこなった。 5.ドイツ文学と宗教伝統との関わり、とくに、17・18世紀の詩学・文芸学の問題を神学との関わりで考察し、ことにその際、比喩形象・修辞の果たした意義を詳しく分析した。
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Research Products
(13 results)
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[Publications] 杉田弘子: "愛の死----ニーチェの戯曲『エムペドクレス』プラン"武蔵大学人文学会雑誌. 33-4. 45-80 (2002)
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[Publications] 杉田弘子: "ニーチェの文体と言語哲学--ローマ的文体への陶酔と言語不信"武蔵大学人文学会雑誌. 34-3. 19-52 (2003)
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[Publications] 杉田弘子: "古代ローマとキリスト教--アンチクリスト、ニーチェから見て"武蔵大学人文学会雑誌. 34-3. 53-93 (2003)
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[Publications] Nitta, Haruo: "Historische Entwicklung des Bestandes der subordinierenden Konjunktion des Deutschen"Akten des X. Internationalen Germanistenkongresses Wien 2000. 2. 321-330 (2002)
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[Publications] Nitta, Haruo: "Luthers rhetorische Stilkunst in seinen deutschen Schriften und sein Sprachstil in der Bibelubersetzung"Neue Beitrage zur Germanistik. 1. 207-216 (2002)
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[Publications] 踊共二: "17世紀ドイツの宗派問題と大衆メディアー-プロパガンダから中立論へ"武蔵大学人文学会雑誌. 34-2. 1-33 (2002)
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[Publications] Shigeto, Minoru: "Tempus, Aspekt und Partizip Prasens in der historischen Entwicklung"Akten des 29. Linguisten-Seminars (Kyoto). 73-79 (2002)
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[Publications] Shigeto, Minoru: "Geschichte der germanistischen Linguistik in Japan und ihre Zukunft in Asien"Neue Beitrage zur Germanistik. 1. 107-116 (2002)
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[Publications] 川中子義勝: "日本語詩の抒情性について"雑誌「ethos」. 9. 165-168 (2002)
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[Publications] 川中子義勝: "私が命のパンである"婦人之友別冊「聖書 よびかける言葉」. 121-127 (2002)
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[Publications] 川中子義勝: "悲哀の人・矢内原忠雄(解説)"日本基督教団出版局 シリーズ「日本の説教」. 11(印刷中). (2003)
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[Publications] 川中子義勝: "北方の博士・ハーマン著作選(上)(下)"沖積舎. 574 (2002)
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[Publications] Kawanago, Yoshikatsu: "Johann Georg Hamann (1730-1788) Beitrage zur Hamann-Forschung"教文館. 208 (2002)