1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11430006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田中 洋子 筑波大学, 社会科学系, 助教授 (90202176)
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Keywords | 社会民主主義 / ドイツ / SPD / CDU / 経済政策 / DGB / 緑の党 / 構造変化 |
Research Abstract |
ドイツの政権党となった社会民主党(SPD)は、緑の党(Grune )との連立の中で、一方で原子力政策の見直しや環境対策の強化、児童手当の増額などに見られるような、いわば伝統的な左派の運動を基盤とした福祉・環境重視の政策を打ち出してきた。しかし同時にその一方で、大規模減税やキャピタル・ゲインへの課税の撤廃、電力をはじめとする民営化・自由化の徹底など、これまでの伝統的左派とは反対に自由な市場を重視し、それを押し進めるための大きな改革も進みつつある。これは一九九0年代の初頭まで一般的に評価されてきた、これまでのドイツの歴史的な「モデル」像を大きく変えうる可能性を持っている。敵対的バイアウトに対する地域的な反対運動の後で、結局行われたクルップとテュッセンの合同や、大規模なマスコミを使った反対キャンペーンにもかかわらずついに遂行されたイギリスのボーダフォンによるマンネスマンの買収は、ドイツ社会の一般常識がついに戦後はじめて、変化しようとしているということの象徴的事件だと言える。これらの新しい傾向に対して、SPDやDGBは、一方では人々の伝統に根ざした運動の声を代弁して、調停に乗り出したりする方向を持ちつつも、他方では新しい変化への積極的対応を行わなければグローバリゼーションの時代に乗り遅れるという強い危機感を持っている。ラフォンテーヌや組合左派に代表される伝統左派とシュレーダー首相派の間には、非常に緊迫した対決的緊張感が存在し、一時は党分裂の危機にまで達するかにも見えたが、現在それはちょうど顕在化したコール前首相のCDU秘密口座の一大スキャンダルの前にかすみつつある。
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