2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11430006
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田中 洋子 筑波大学, 社会科学系, 助教授 (90202176)
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Keywords | 社会民主主義 / ドイツ / SPD / 緑の党 / 労働の未来 / グローバリゼーション / 大企業 / DGB |
Research Abstract |
現在ドイツ社会民主党(SPD)政権が抱える問題は三つの位相に分かれていると考えられる.一つは新自由主義的傾向とも称されるように、グローバル化に備えてドイツ社会を変革し、時にアメリカナイズする方向であり、これは大企業の株主との関係の変化やノイエ・マルクトなどの新しい証券市場の発展、それらを後押しする一連の経済政策として捉えることができる.もう一つはこれとは全く反対の方向性であり、一つは労働組合を中心とした伝統的左派のある意味で保守的な勢力であり、さらに反グローバリゼーション運動の欧米全体での広範な広がりという新しいタイプの抵抗運動の展開をも含んでいる.ここでは企業のアメリカ化は拒否され、むしろ解雇を避けて労働条件を守り、地域社会を守ろうとする方向性が見られる.SPDは自らの歴史的なアイデンティティから、こうした動きを完全に制止することはできない.そして最後にはドイツが今後長期的に迎えるであろう社会的な構造変化への長期的計画策定という問題である.高齢化社会に対応する社会保険・年金制度改革の問題へのビジョン、地球規模での環境悪化に対応する環境税や企業への規制などの政策、そして失業問題やアウトソーシング・IT化などに対応する新しい労働世界、働くことの未来へのビジョンなどがこれにあたる.いずれの問題も一九九○年代後半から現在までの間に大きく議論が展開し、かつ社会的緊迫度を強めている.特に企業と労働の問題は日本でも同様に摩擦を伴って変化しつつあり、これに対してSPDや緑の党がどう新しい展望を打ち出せるかは継続した注目に値すると言うことができる.
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